2022 Fiscal Year Research-status Report
The Statehood of Modern Japan in the Context of East Asia; For Theoretical Reorganization of Public Law in Contemporary World
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18K18552
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小畑 郁 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40194617)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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Keywords | 公法学 / statehood / 近現代日本 / 国際法と国内法の関係 / 日本の入国管理法 |
Outline of Annual Research Achievements |
占領管理下日本におけるstatehoodの再編成が国内・国際公法理論に影響をもたらした最も典型的な例として、国際法に由来する連合国最高司令官が発する「管理法令」の性格と日本の国家法との関係が注目される。占領終了に向かう中、この処理方法を考える前提として、国内において私人をも拘束する効力を有したこと着目し、それをどのように位置づけ「処理」しようとしたのか、法制官僚を中心とした法実務、宮沢俊義、田中二郎といった有力な公法学者の理論に着目し、分析を行った。これと比較しつつ、占領初期に打ち出された田畑茂二郎の「変型」理論(国際法は国内法に「変型」されなければ国内的に妥当しないという理論)批判の意義を考察した。この研究の一応の成果は、「行政主導の国際法の「変型」体制と「棲み分け」観念による国際法の形而上への捨象」法律時報94巻4号10頁以下で公表したが、この論文について関連研究をすすめている出口雄一教授(当時・桐蔭横浜大学)の意見を求め、また国立公文書館で追加の資料収集を行うなど、引き続き研究を進めている。 この関係で、田畑の占領初期にすでに生じた主権否定論から主権肯定論への変化と東京裁判評価の変化に連動性があるのではないか、という仮説に基づき、東京裁判についての法理論の受けとめについて、研究を行い、ソウル国立大学で開催されたワークショップで英語で報告を行った。 Statehoodの人的外郭を形成するものとして入国管理法については、引き続き研究をすすめ、日本については、「日本の外国人法史における「在留資格」概念の肥大化」広渡清吾=大西楠テア編『移動と帰属の法理論』岩波書店所収を公表した。日本の状況を客観的に評価するために、国際移住migration国際的議論に参加し、国際的動向をフォローするとともに、比較のためアジア諸国の状況についても編著を準備する過程で情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近現代日本のstatehoodの変動と国際・国内公法理論の動向との相互関係を明らかにするといっても、次の「開拓」段階に進むための、具体的ないくつかの重要論点とそれを議論するための資料状況と関連研究動向を明らかにすることが、本研究の到達目標であった。 それに照らして評価すると、アジア諸国の文脈で特殊な日本近代のstatehood(領域的・人的区分双方における内外の「線」的区分)については、関連研究動向の調査により、ほぼ輪郭が明らかになり、占領管理下の現代につながる日本のstatehoodの再編成についても、関連研究動向の調査といくつかのパイロット的研究により、重要論点が明確になってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 引き続き、戦後日本の国際・公法理論のあり方を決定づけた占領管理体制とそれに対する向き合い方について、資料収集、関連研究を進めている研究者との意見交換、研究はっぴ用をすすめ、研究の一応のとりまとめを行う。 (2) それとも関係するが、戦後日本の入管法の形成過程と、在日コリアンの地位について法理論の総括作業をすすめる。 (3) 現代的statehoodの輪郭を定める国際移住への法的対応の中での日本的特徴を浮き彫りにするため、国際的議論に引き続き参加し、アジア諸国を中心に比較法的知見を深める。 (2)と(3)の一部についての研究成果を『国際移住の公法学のために(仮題)』といった単著にまとめるための作業を行う。
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Causes of Carryover |
2022年度は、新型コロナ下のさまざまな規制が緩んではきていたが、各国の規制、国内の研究機関の利用規制、航空機の減便や航空機代の高騰などにより、早期にかつ旺盛に外国・国内出張を計画することが、その費用対効果という観点を考慮にいれると、出来なかったし、すべきではないと判断した。 2023年度については、引き続き航空機代の高騰との問題はあるが、比較的早くから出張計画を立てられる状況にあり、また、コロナ罹患・発症による出張取りやめのリスクもワクチンの順調な接種等もあり、回避できると考えている。また、更新期にきているノートパソコンもこの研究の取りまとめと出張が多く入るので、早めに更新したいと考えている。
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Research Products
(4 results)