2019 Fiscal Year Research-status Report
法学・心理学・脳神経科学の学際的研究による取調の適切性を評価する客観的尺度の構築
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18K18555
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山崎 優子 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (20507149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲 真紀子 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (00172255)
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 取調べ / 被暗示性 / 学際的研究 / ピースモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
虚偽自白による冤罪は国内外で複数存在する。イギリスでは冤罪を契機として、自白を得ることを目的としないピースモデルが開発され、わが国の検察においても適用されつつある。しかし、日本においては、取調べの適切性をめぐり、批判的議論がみられる。各所で行われる取調べについて信頼感が担保されるためには、取調の適切性を測ることのでき標準化された客観的指標が必要だと思われる。こうした背景をふまえ、本研究では、法学者・心理学者・脳神経科学者による学際的研究を行い、取調の適切性が客観的に測定可能な指標(尺度)を構築することを目的とする。具体的には、取調の適切性に影響する可能性のある要因を抽出し、取調の適切性を客観的に測定できる指標を構築する。 2019年度は、取調者の事件に関する知識の有無や被取調者の個人特性(ワーキングメモリ、被暗示性、迎合性)、取調手法(ピースモデル、ピースモデルでない)が、事件を目撃した被取調者の事件に関する記憶の正確性、情報量との関係を明らかにする目的で、心理学実験を実施した。実験協力者は、被取調者役84人とピースモデルの研修を受けた取調者役8人であった。本実験の結果から、取調者の質問の仕方(オープン質問か否か)と被取調者の被暗示性が、被取調者の記憶の質と量に影響を及ぼすことが示唆された。これらの結果をふまえ、2019年度はさらに、質問の仕方と被暗示性が被取調者の事件に関する記憶に及ぼす影響に関する神経基盤を解明する目的で、fMRI実験を実施する計画であった。しかし、新型コロナウィルス禍の影響で、実験を中止することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に計画していた心理学実験は実施した。心理学実験では、仮想的に取調を実施し、行動レベルのエビデンスにもとづき、取調の適切性に影響する要因を検討した。2019年度はさらに、心理学実験の結果をふまえて、fMRIによって被取調者の脳の賦活の変化を計測し、被暗示性などの個人差を反映する神経基盤と個人差には依存しない普遍的なプロセスの神経基盤を明らかにする計画であった。しかし、新型コロナウィルス禍の影響で、実験の中止、延期を余儀なくされた。実験実施が可能となり次第、実験を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス禍の影響で、研究施設への入構規制が緩和されるまで、実験実施は困難な状況である。実験実施が可能な状況となり次第、安全策を十分に講じて、実験を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、次のとおりである。 ①新型コロナウィルス禍が原因で、2019年度に計画していた実験実施を延期したこと、②対面での研究打合せ、及び研究会参加を見送ったこと。 本年度の助成金の使用計画は、次のとおりである。①fMRI実験実施に係る経費(実験協力者に対する謝金、実験実施者の交通費・宿泊費)、②心理学実験実施に係る経費(実験協力者に対する謝金、アルバイトに対する謝金)、③学会参加費
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[Book] 教育心理学2020
Author(s)
糸井尚子・上淵寿・仲真紀子ほか11名
Total Pages
200
Publisher
学文社
ISBN
978-4762026157
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