2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の国際関係論における「ゆがみ」の発見とその意味-「観察批判論」からの接近
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18K18557
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 高敬 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00247602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤星 聖 関西学院大学, 法学部, 准教授 (20795380)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 国際政治理論 / グローバル国際関係論 |
Outline of Annual Research Achievements |
『国際政治』掲載の論文から得られたデータに、アメリカ、ドイツ、イギリス、欧州全体およびアジア太平洋地域を対象とする専門誌のデータを追加して比較的な視野から日本の国際関係論研究の特徴を明らかにする論文を2019年度にホノルル(米国ハワイ州)で開催予定であった米国国際政治学会(ISA)の研究大会で発表するはずであったが、新型コロナウイルスの感染拡大のために当該大会が中止となった。そのため、昨年度(2020年度)の5月にそれに代わる国際研究会をベルリン自由大学の研究チームと共同でオンライン開催し、同研究会においてISAでの発表予定原稿を改めて加筆修正した論文を口頭で発表した。 その後、その研究会で得られたコメントを参考に、当該論文の改善点に関して研究代表者と研究分担者の間で検討を重ねて、その検討結果を踏まえてドイツ側の研究者との研究成果の共有および、このテーマに関する専門書の共同執筆の可能性を模索したが、日本政府によって緊急事態宣言が発せられ海外渡航が実現できず、ドイツ側との対面での研究交流は実現しなかった。しかし、その間、データのコーディング基準を海外における研究結果とより比較可能なものにするための検討を行い(記述的な研究と事例研究の違いに関する基準や定量的な分析と定性的な分析の違いに関する基準などの見直し)、再設定された新しい基準に従ってデータ解析を再実施した。またそれと並行して日欧米の専門誌について「その他の理論」を対象とする「共起」分析を行なった。その結果、国際関係論研究の理論志向性の低さと国内政治もしくは外交政策に傾倒する研究の間に強い相関が見られたのは、日本の場合だけであることが判明した。また「その他の理論」に関しては、日本の場合は、欧米と異なり、特定の隣接領域との関係性が全く見られないという興味深い発見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前回と同様に、引用文献のコーディングに関しては、社会科学分野における文献引用がデータベース化されていないことから、アメリカあるいはイギリスを起源とする理論の日本の国際関係論研究への影響を定量的に測定することは断念された。対象論文の著者の経歴(CV)に関するデータについては、そのデータを共同研究のパートナーであるベルリン自由大学の研究チームに提供することにより、著者の欧米への留学経験と著者が支持する欧米起源の理論パラダイムとの関係に関する国際比較を共同で実施することができた。しかし研究者の安全保障への関心の程度と、非軍事的な研究課題の選択傾向との関係については、TRIPデータと専門誌から得られたデータを対応させる必要があることが判明し、それには代表者および分担者のエフォート率をはるかに超える膨大な作業を要するため、着手できなかった。また上述したように、感染拡大により海外渡航が困難となったため、海外の研究者との研究成果の共有や共同執筆に関する検討は実現できなかった。とはいえ、コーティング基準の見直しや、データ解析の再実施を通して、日本における国際関係論研究の特徴を前年度と比較して、より正確に、またより詳細に定量化できたことの意義は大きいと言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の日本国際政治学会研究大会および、2020年度に実施したベルリン自由大学の研究チームとのオンラインワークショップで得られた貴重なコメントと、コーディング基準の見直しに伴って再実施したデータ解析の結果などを踏まえて、現在、英文ジャーナルに投稿する論文を共同執筆中である。本年度中には同論文をしかるべき英文ジャーナル(例えば、日本の国際関係論研究の動向に大きな関心を寄せる購読者が想定されるInternational Relations of the Asia-Pacific)に投稿し、掲載に至ることができるように進めていく予定である。また、その過程で適宜ドイツ側の共同研究チームとも、できれば対面で研究成果を共有し、加えて論文等の共同執筆の可能性も探りたい。またその際にISAの年次大会などにおいて研究成果の共同発表の可能性なども併せて検討したい。 最後に、本研究課題の総括として、日本の国際関係論研究の国際化にとってリベラリズムやコンストラクティビズムなどの理論パラダイムが重要であるとする本研究の結論を踏まえて、どのような研究テーマを設定することがそのような理論研究の強化につながり、ひいては日本の国際関係論研究の国際化に貢献するのかについて、年度末に研究分担者および連携研究者を研究代表者が所属する名古屋大学に招集して検討することとしたい。
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Causes of Carryover |
本課題の研究代表者および分担者は、国内外の新型コロナウイルスの感染拡大により、本課題の最終年度に予定されていた海外の研究者との研究成果の共有、ならびに当該研究成果の海外への発信を十分に実現することができなかったために、本予算を予定通りに執行できず、研究代表者は、止むを得ず、予算を次年度に繰り越すことを研究分担者との同意の上、決定した次第である。 したがって本年度は主として、研究成果の共有と、その国際的な発信にかかる打ち合わせのために11月にベルリン(ドイツ)に渡航することに予算を使用する(代表者および分担者それぞれ40万円)。もし新型コロナウイルス感染症の関係でそれが困難になった場合には、研究関連図書および英文校正代として予算を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)