2020 Fiscal Year Research-status Report
新カテゴリの創造と制度化:新興企業正当化過程の理論・実証研究
Project/Area Number |
18K18568
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
軽部 大 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (90307372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 大輔 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10754806)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 日本 / 中国 / IPO / 創業 / 正当性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本と中国のIPO市場に注目し、1)新興企業の設立を通じて新製品やサービス、事業カテゴリが社会に提案される過程、2)企業による社会への提案が社会構成主体によって支持(反対)される過程、その結果、3)社会に受容(非受容)される過程を明らかにすることから構成される。これら一連の過程を、社内の創業者と経営チーム、そして経営チームを取り巻く信用供与・資源提供者がそれぞれ果たす役割に注目し、当初社会の承認を得ていない新しいカテゴリが信用供与・資源提供者の支援を通じて、 社会的正当性を確立する過程について解明することを最終目標に据える。 研究実施の3年目となる2020年度は、2019年度に引き続き実証研究の基礎となるデータベースの構築に注力し、最終的なコーディング作業を推進した。具体的には、日本のIPO企業841社と中国IPO企業(深セン創業版上場企業)570社について、創業・上場・上場後の一連の成長過程を比較可能にするデータセット(創業者・創業チーム・上場前後の役員情報、取引関係、企業成果)の構築作業を推進した。 日中併せて約3万人(日本データ約1万人、中国データ約2万人)の経営人材の属性及び前職との関係性を同定し、比較可能な形で創業に関わる経営者(創業者、創業チーム、上場支援チーム)の企業家ネットワークを同定し、可視化できたことが最大の成果である。その結果、両国ともに、多様な背景を持った人々がIPO市場の創業過程に関与していること、そして相当数の創業者が大企業に前職を持ち、創業者が離職・創業を通じて、大企業とIPO企業の間の知識移転とネットワーク形成、そして正当性の確立過程を担っていることを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年の研究計画期間においては、2019年度と同様に、1)中国語と中国企業に精通した研究補助者を見つけることに時間を要したこと、2)日中データともに前職企業の分類に想定以上に作業時間を必要としたため、研究の進捗状況が遅延している状態にある。加えて、コロナウイルス感染症拡大に伴い、継続的な研究補助者の確保も2020年度当初から困難となった。もっとも、2020年度秋以降には、2名の大学院生を研究補助者として新たに確保することができ、最終年度となる2021年の4月末までにはその遅延状態を完全に解消する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は研究計画の最終年度であるため、可能な限り分析作業を前倒しして、研究成果の公表に努める計画である。具体的には、1)2019年度に発表した中国の政治的つながりとIPO成果との関係についての論文の国際査読誌への投稿作業に注力する。 また、2)2021年度には新たに、目論見書に記載される投資使用計画を用いて、中国IPO企業の研究開発行動に注目し、上場前後で出資を通じた政治的つながりが研究開発投資に与える影響を検討する研究を推進し、国際学会で発表することを予定している。 さらに、3)日本のIPO企業の上場過程を前職企業との関係で体系的に整理し、大規模既存企業と新興企業との関係を経時的に俯瞰する研究を推進する計画である。 一連の作業を通じて、新しいビジネスの正当化過程について、創業者による主体的な企業行動と、企業を取り巻く外部主体による信用供与過程の双方から、学術的意義のある知見を導出し、発表・公刊予定である。
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Causes of Carryover |
当初前倒しして作業を進める予定であったが、コロナウイルス感染症の影響により、研究補助者の確保が一時的に困難となり、結果的に当初予定していた作業を前倒しすることができず、研究進捗がやや遅延する状況が解決できないこととなった。そのため、次年度使用額が生じた。しかし、すでに複数の研究補助者を確保することが確定しており、前倒しして最終年度となる2021年度の作業を実施する計画である。
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