2020 Fiscal Year Research-status Report
被災者の生活復興を支援する企業と消費者の協力スキームの実践的研究:CRMの活用
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18K18578
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
馬場 新一 神戸大学, 経営学研究科, 経営学研究科研究員 (50722641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國部 克彦 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70225407)
森村 文一 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (80582527)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | CRM(コーズ・リレーテッド・マーケティング) / 被災企業 / 商店街間の復興支援 / 倫理的消費 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究のテーマである非公的資金を創出するCRM(コーズ・リレーテッド・マーケティング)は、活用事例が増えてきている。業種・規模も多様化してきたが、小規模な企画が中心である。現状では商品のプロモーションで留まっているため、復興支援の流れを作るまでの企画にはなっていない。災害後の被災地・者への復興を支援する自由裁量の資金を創出しても、事業者にとっては資金面以外にも販売経路の確保などの課題も存在していた。そこで、被災地企業の復興支援に関しては、補助金などで生産設備の復旧や製造だけでなく、その先の流通販売面についても研究を進めた。復興の進捗差がある被災地域の企業から聴き取り調査を実施した。東日本大震災の被災地応援セールでは、百貨店、スーパーが企画する「復興セール」など実施される時期は、被災している事業者が商品などを揃えることができなかった時期であった。企画を早く実施したい流通側とのタイムラグである。また、災害復旧では生産設備や原材料確保なども重要であるが、販売ルートの確保や復活に時間がかかった。被災企業が早期に復旧するためには、生産と販売の両輪が成立するための提案が必要である。 小規模事業者間の支援活動も効果があった。非被災地の神戸岡本商店街が被災地の気仙沼商店街を応援した事例である。気仙沼から商品を仕入れて、岡本商店街で販売した。単発ではなく継続して販売した。担当者の意見では、売上げ規模は大きくないが、継続した取り組みは被災地・者の精神的な支えになったとの意見を得た。 消費者庁は、被災地産品や寄附付き商品を購入して支援する消費者を倫理的消費者と位置付けている。兵庫県の調査では「倫理的消費は継続することで浸透する」という結果が出ている。徳島県阿波町で、地域の生活支援にCRMを継続している事例がある。この地域でCRMに参加する消費者の意識が先行指標になるかの調査が未達となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナの関係で面談等に遅れが生じた。災害後の被災地・者への復興を支援する非公的資金の創出が研究テーマではあるが、事業者との対話で復興支援は資金以外もニーズがあり、複合的支援の研究も実施した。 1.被災地応援セールなどの企画を百貨店、スーパー等で実施する時期は、被災している事業者が商品を生産する事や販売する商品などを揃えることができない点に問題があることが分かった。消費者が関心を寄せて、市場でプロモーションを展開する時期としては、消費者の関心が高い時期を狙うため、被災していないか軽度の被災事業者がセールに参加することになる。被災した企業が商品を出荷できる時期では、消費者の関心が薄れている。消費者の関心が高まる時期を逃せない流通事業者の面談調査が残っている。 2.商店街同士の支援を研究に取上げた。商店街と商店街が小規模事業者同士の支援活動を実施した事例を調査した。事例は1例しか把握できなかったため、神戸岡本商店街が気仙沼商店街を支援した事例を取り上げた。気仙沼商店街の店舗から商品を仕入れて、岡本商店街で支援セールを実施、常設売場も開設し、継続して支援を行った。各商店街の複数担当者から意見を聞いた。被災地側の気仙沼商店街は、単発ではなく継続した支援が現地の精神的な支えになったとの意見を商店主などから得た。商店街の実施当時からの時系列内容の詳細をまとめが遅れた。今後の好例として展開できるか、継続のための要素(仕組み、コスト、人的資源投入など)を次年度にまとめる。 3.消費者の意識変化の研究に着手した。SDGsの達成に倫理的消費の促進が必要として、消費者庁が全国で「エシカル消費」の推進活動を進めている。消費者庁が進めるエシカル消費には、被災地産品や寄付つき商品の購入が含まれているため、消費者の意識が変化しているかデータを収集している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.CRMに関する調査研究 小規模のCRM事例も多くみられるが、効率的に全体を把握することが難しいため、新年度は現地調査に加え、ネット検索を加えてできるだけ多くの実施事例を把握する。規模や金額、購入者の反応などの情報をまとめ、課題を整理し活用につながる提案をする。 2.被災地・者でも事業者に対象を絞り、復興支援の多様な方策を提案できるような研究を進める。①2020年に発生した熊本県の水害では、焼酎の製造会社が集まり共助を行った。共同で焼酎の販売額に寄付金を含むCRMを実施した。この取り組みの詳細な内容や市場での反応などについて調査を実施する。②被災後の復興支援セール企画が被災事業者にとって有効な復興支援策となるよう、流通事業者と消費者に関する課題を整理する。 販売ルートについては、競合他社に代替品として侵食されるケースも見られることから、被災企業支援の倫理的取引(エシカルトレード)のような考え方も必要と考える。流通事業者の支援に関しては、企画などマーケティング面での研究が新たに必要と考える。熊本県の水害では、球磨焼酎の業界団体が、支援事業を実施した。この支援事例から、流通事業者と消費者の関りを研究題材に加える。 3.商店街の取組み 一般の被災者でも同じで、忘れられてしまうことが心の支えを失うことになる。規模が小さな商店は、意欲も低下しがちになるが、継続することで復旧する力になる。商店街と商店街の事例は、この1例しかないため、この事例を深堀し、期間、売り上げ規模、消費者へのアピールなど定着させる課題を明確にする。
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Causes of Carryover |
旅費、エシカル調査費用、アルバイトなどの人件費、消耗品費
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