2020 Fiscal Year Research-status Report
Spatial Economics for Regional Revitalization in the Era of Declining Population
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18K18580
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
濱口 伸明 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70379460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 昌久 京都大学, 経済研究所, 特任教授 (90281112)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 東京一極集中緩和 / リモートワーク / ブランド農業 / 社会資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、人口減少局面で周辺の小都市の存在が不安定化し、大規模災害等の一時的ショックによって人口移動が起こり、東京一極集中を強めるという問題意識の下、強靭な地域を再生する形成に資する空間経済学の理論的発展と実証的検討を行うことを目的としている。本計画開始後の2年間で、理論研究では、人口減少過程の階層的都市システムの分岐は規模の経済によるロックイン効果が作用するため単純に人口増加過程の逆をたどるわけではないことがわかったが、本年度の研究の結果、周辺の小都市がロックイン効果により維持されている状況で、大規模災害により人口流出が引き起こされて、人口減少過程よりも早く小都市が消滅して大都市に人口が集中するような分岐が発生すると、経済全体に厚生損失が生じることが分かった。人口減少に対して周辺都市の人口流出への粘着性を高める方法として、自然資源を生かして差別化した産業を興すことの重要性と、地域コミュニティが弱まった規模の経済を補完して生産性向上と知識創造を促し、人口減少が集積の経済を弱める負のフィードバックを反転させる可能性があることが明らかになった。 さらに本年度は新型コロナウイルス感染が「三密」を集積の経済の源泉とする大都市を中心に拡大したことについて、日本および欧米の状況を実証的に分析した。その結果、感染拡大期には人口の3倍以上の感染者が大都市に集中する「規模効果」が現れること、その後に人の移動により周辺地域に感染が拡散することで全国が自己増強的な感染地域になる過程をたどることがわかった。大都市の過密性を減じるために、通信技術を用いて、多様な働き方をする人口の地方分散を図ることが有効であることもわかった。本研究計画の成果として。これらの分析結果を英文の書籍にまとめ2021年度に刊行する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って理論的、実証的分析を着実に進めることができた。2020年度には新型コロナウイルス感染拡大という新たな問題が分析の対象に加わり、計画よりもさらに研究の幅を広めることができた。コロナ禍の影響については、これまで行った研究では大都市の三密がもたらす感染のリスクを減らしながらも、活発なコミュニケーションを通じた知識伝達・創造の場という、これまで知識創造社会における大都市の強みであった面を損なわない方法を検討することにつながった。我々の研究から鍵を握るものと示唆されるのは、数年前から注目されていたが日本では本格的に導入されてこなかったデジタル・トランスフォーメーションであり、コロナ禍を契機にこれが一気に進むと予測している。本研究の知見は中部経済連合会の政策提言に反映され、日本経済新聞・経済教室やCEPRの政策フォーラムVoxEUでもコラムを執筆した。また、国会議員を対象にした講演や経済産業省研究会への参加などを通じて、政策形成にも貢献している。他方で、コロナ禍が地方経済に与える影響については、まだ十分な検討を進められていない。行動・移動制限により大都市の飲食店で地方の特産品の需要が落ち込んだことや、近年盛り上がりを見せたインバウンド観光および国内観光旅行も大幅に冷え込んでいることが、地方経済に大きな打撃を与えていると思われる。しかし、予定していた地方の訪問調査がまったくできなかったことから、2020年度に研究を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画で予定していた地方訪問調査が可能になれば、ぜひこれを実現したい。これまでの研究で蓄積した知見について地方の事業者、行政官と意見交換し、コロナ禍後の最新の状況を研究にもさらに反映させて、本研究の成果として2021年度中にSpringer社から出版予定の英文の専門書に情報を反映させたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため、予定していた海外出張、国内出張ができなかったため。感染対策が万全になった適当な時期に、予定していた海外出張、国内出張を計画し実施する。
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Research Products
(3 results)