2019 Fiscal Year Research-status Report
Trade Liberalization and Within-Country Disparity in Developing Countries: Applications of Satellite Imagery in International Economics
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18K18582
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
岡部 美砂 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (20434649)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 夜間光画像 / 貿易自由化 / 地域間所得格差 / ASEAN / 地域経済統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、途上国において貿易自由化の利益が一国内に波及する過程や地域間格差に与える影響を、主にASEAN加盟国を対象に人工衛星画像を利用して実証分析を実施するものである。地域ごとの詳細なデータが得られる人工衛星画像を利用することで、貿易自由化の効果が国内地域格差に与える影響の一側面を明らかにし、貿易自由化による利益の再配分政策へのインプリケーションを得ることを目的としている。 2019年度は、前年度から収集・整理している米国海洋大気庁の気候環境情報センターのDMSP-OLSの夜間光画像、および村落レベルの人口推計データ(GADM)を用いて、ASEAN6カ国(カンボジア、インドネシア、ラオス、フィリピン、マレーシア、ベトナム)を対象に、最小地区ベースの一人当たり所得水準の推計値を構築し、貿易データおよび地理的条件等の変数を用いて、ASEAN域内貿易の自由化が、地域別の一人当たり所得水準の変化に与える影響を分析した。その結果、域内貿易自由化により、全体として一人当たり所得水準は上昇していることがすべての国で見いだせた。一方、その効果は都市部でより大きいことが多くの国に共通しており、都市・地方間の格差拡大の要因となることを示唆している。一方、港湾や道路のような輸送費に影響するインフラがあることにより、貿易自由化が一人当たり所得水準に与える正の効果を高めることも見いだせた。これらの分析結果を論文としてまとめ、国際大西洋経済学会(2020年3月から延期)および東アジア経済学会(2021年に延期)で発表する予定である。次年度(2020年度)は、人工衛星画像の種類を増やすことでより詳細な地域を対象にして分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで構築していたデータベースを用いた分析を複数国を対象に実施できた。一方、研究成果を当該年度中に国際学会で発表する予定であったが新型コロナウイルス感染拡大のため開催が延期され、2020年度以降に報告を行うことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は前年度までの地区・村落レベルの経済活動データによる貿易自由化が地域レベルの所得水準の変化に及ぼす影響の分析をより詳細なものにして推計モデルを発展させる予定である。また、これまでに得られた結果にもとづいて、分析対象をより限定した地域にするために夜間光以外の衛星画像を用いた詳細な分析も行う予定である。最終年度であるため、前年度までの成果も含め、研究成果を論文として順次公表することに努める。
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Causes of Carryover |
2019年度の研究成果をまとめた論文を年度末に国際学会で発表する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大により開催が延期された。また、同時期に予定していた海外共同研究者との研究打ち合わせ等も延期を余儀なくされた。そのためそれらの学会や共同研究のための渡航費や参加費が今年度中に使用できず、2020年度に開催・参加することを予定している。
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