2022 Fiscal Year Research-status Report
多文化社会の構造と主観的格差の関係についての実証研究
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18K18589
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
横溝 環 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (20733752)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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Keywords | 主観的格差感 / PAC分析 / 関係流動性 / 承認 / 包摂 / 多様な学びの場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多文化共生の対象を国籍や民族に限定せず、個人の感じる主観的格差を多面的・流動的・重層的に解釈していくことで、多文化共生社会に対する新しい指針を示していくことを目的とする。今年度の実績は以下の通りである。 1.著書(共著):1本 当該著書は、外国人児童生徒を取り巻く学びの場の現状と課題について、ブラジル人学校、外国人受け入れ重点高校、夜間中学をフィールドとした調査を基に論じた。(1)制度、家族、文化・思想が子どもの関係流動性(学校・進路の選択の自由)を阻む力として働いていること、(2)メインストリームでの機会(選択肢)をより多く獲得できる可能性のある公教育と、周縁ではあるが承認/包摂を得やすい私教育にはジレンマが生じており、日本社会では前者が偏重される傾向が強いこと、(3)外国人支援制度の整備はもとより、多文化共生社会の一員であるという当事者意識を市民が育んでいく必要があることを指摘した。 2.口頭発表:1本 日本人の成人4名を調査協力者としPAC分析を行い、筆者がこれまで示してきた主観的格差感の構造モデルの整合性を確認するとともに、社会改革の抑制要因と促進要因について検討した。社会変革の抑制要因として、マジョリティに有利なルールが前提となるメインストリームで勝負をしている限り現状のシステムから抜け出せないこと、自らの経験を肯定すべく形成された無意識の規範が挙げられる。一方、促進要因として、システム変革動機、他者志性の高さ、マジョリティとマイノリティの協働が浮かび上がってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「社会改革の阻害要因および促進要因」についての論文執筆も進み、令和5年度中に投稿予定である。今後は研究結果を実践活動につなげていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
「社会改革の阻害要因および促進要因」についての論文を投稿する予定である。 今年度は、以下の実践活動を行う予定である。 (1)在日コリアン(朝鮮学校)と大学生との交流から、オールドカマーとの共生(将来像)を再考するとともに、ステレオタイプ・偏見の低減をはじめとした教育効果について検討していく。 (2)不登校となっている外国ルーツの子どもたちの居場所づくりを自治体・企業とともに検討する。
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Causes of Carryover |
COVID-19のリスク回避を優先し、研究代表者および学生たちによるフィールド調査が十分にできなかったため残高が生じた。令和5年度は、学会への参加、次の新たな研究につなげるためのフィールド調査、文献購入等に用いる予定である。
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