2023 Fiscal Year Annual Research Report
An Exploratory Study on the Relationship between Multicultural Society and Subjective Disparity
Project/Area Number |
18K18589
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
横溝 環 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (20733752)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
|
Keywords | 主観的格差感 / 社会改革 / 促進要因 / 阻害要因 / 責任帰属 / メインストリーム / マイノリティ / マジョリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、これまでPAC分析を用いて行ってきた主観的格差感の研究の総括として、社会改革(社会制度・行政サービスの整備への直接的/間接的働きかけ)の阻害要因および促進要因について、主観的格差感の視点を交えて論文にまとめ上げた。研究結果は以下の通りである。 社会改革の阻害要因としては、(1)主観的格差感(-)の責任を自己に帰する、(2)多数決による決定、(3)対立緩和のためにマイノリティがマジョリティに歩み寄りを図ろうとすることから生じる承認者―被承認者という不均衡な関係の固定化、(4)無自覚な優位性および規範的ステレオタイプの4点を見出した。これらは全てメインストリームにおける規準が前提となっており、マイノリティとマジョリティが対峙している状態では、社会改革(メインストリームにおけるマイノリティの承認/包摂の獲得)は一筋縄ではいかない様相が見えてきた。 一方、社会改革の促進要因としては、(1)メインストリームにおける主観的格差感(-)(「機会の平等」)の責任を社会に帰する、(2)(間接的かつ長期的展望ではあるが)メインストリームの価値基準に固執せず「個/多様性の尊重」に努める姿勢、(3)他者志向動機・互恵意識の高さ、身近な人々との協働、(4)時代の波を示した。 今後の社会改革への働きかけの進展は、メインストリームの内外を問わず、社会を構成する人々とりわけマジョリティが抱く違和感をメインストリームの規範から外れた逸脱と捉えるか、多様な選択肢の一つとして新しい社会的現実への一歩と捉えるか、その判断・解釈に懸かっていると考えられる。
|