2019 Fiscal Year Research-status Report
日本人の戦争観とアニメ・特撮―学術的研究方法のプラットフォーム構築を目指して―
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18K18596
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
小島 伸之 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00449258)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 戦争観 / 社会意識 / テクストマイニング / アニメ / 特撮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦争や平和に関する社会意識の形成に影響を与えていると考えられる学校教育・劇作品・ノンフィクション等の間接的知見・体験のうち、特にアニメ・特撮作品に注目し、1960年-2010年代までの、①アニメ・特撮作品における戦争の描かれ方の分析、②アニメ・特撮作品の主題歌の歌詞分析、③質問紙調査の三つの検討を通じて、今日の日本人の戦争に関する社会意識の形成についての学術的解明の手掛かりを得ることを目的としている。 本年度は、上記①②に関する過年度及び本年度中の研究成果をとりまとめ、論文と研究報告、各1点を公表した。 論文1点は、長期シリーズ巨大ロボットアニメ(機動戦士ガンダムシリーズ)の戦争観の変遷を扱ったもので、作品中で描かれる戦争が、現実の戦争の変化を反映しつつ、「フィクショナル」な描かれ方に変化していること分析したものである(小島伸之「巨大ロボットと戦争」池田太臣・木村至誠・小島伸之編『巨大ロボットの社会学-戦後日本が生んだ想像力のゆくえ』法律文化社、2019年、pp. 112-131)。 研究報告1点は、戦争・戦いを描いたアニメ・特撮シリーズ等の主題歌・エンディングの歌詞の変化をテキストマイニングによって分析し、1970年代に多く使われていた「戦い・勝利」に関する語が80年代以降半減していることなどを明らかにしたものである(「日本におけるアニメ・特撮ソングの歌詞の特徴と変遷」(第92回日本社会学会大会、研究法・調査法(2)」 )。 後述するように、①に関する個別の作品・シリーズを超えたアニメ・特撮作品の戦争観を分析するためのプラットフォームの提示、及び③の質問紙調査については、研究の進捗にやや遅れがみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、1960年-2010年代までの、①アニメ・特撮作品における戦争の描かれ方の分析、②アニメ・特撮作品の主題歌の歌詞分析、③質問紙調査の三つの検討を通じて、今日の日本人の戦争に関する社会意識の形成についての学術的解明の手掛かりを得ることを目的としている。 現在までの進捗状況として、長期アニメシリーズ作品の戦争観の変遷を分析するなど、①及び②に関しては一定の進捗状況にある一方、①に関するアニメ・特撮における戦争観を広範に比較検討するためのプラットフォームづくり、および③に関するアニメ・特撮作品が視聴者の戦争観に与える影響についての質問紙調査については、準備及び検討が順調に進んでいるとはいえず、計画に比して遅れがみられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の様に、アニメ・特撮における戦争観を広範に比較検討するためのプラットフォームづくり、およびアニメ・特撮作品が視聴者の戦争観に与える影響についての質問紙調査については、作業に遅れがみられる。 それに対応するために、当該テーマに関心を持つ研究者が集まる研究会(アニメーションに関する学術研究の会)において短いスパンで関連報告をし、研究推進に向けた検討を進める等の対応を行っている。 なお、コロナ禍によって研究の進捗、特に質問紙調査の実施に影響が及ぶことが予想され、その場合には研究計画の一部修正や研究期間の延長なども視野に入れた対応を検討する。
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Causes of Carryover |
前述したように、本研究の①及び③の準備状況を中心に、研究の進捗にやや遅延が見られ、関連する費目の支出が計画に比して少額となった。 次年度においては、遅滞している研究を進捗させることによって、これまでの計画で支出する予定であった費目を使用するほか、コロナ禍の影響も考慮したうえで、研究内容の一部修正や研究期間の延長を視野に入れた検討も行う予定である。
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