2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K18598
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古橋 忠晃 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (50402384)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | ひきこもり / 社会的退却 / フランス / ヨーロッパ / 青年 / 国際尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
「ひきこもり」がヨーロッパの青年の中に一定程度出現しているのは事実となってきた。 しかし、「ひきこもり」の重症度を測定する共通の尺度が存在しないので、研究代表者はしばしば不自由さを感じていた。現在ある既存の尺度は、時間的段階を示す尺度であり、それぞれの段階の重症度を測定する尺度は存在しない。また、Social-Adaptive Functioning Evaluation(1997)は評価内容が統合失調症向けのものであり、さらにApathy Evaluation Scaleは(2015)は自記式であり閉じこもって評価者が接近できない患者には有用性が低い。本研究によって、イギリスのグラスゴー大学やフランスのストラスブール大学と共に 国際標準尺度を作成する予定であり、それは「ひきこもり」の出現国である日本にとっても喫緊の課題であると言える。また、本尺度は、社会的にも国際的にも待望されており、 極めて実現性の高いものである。作成された尺度を使って将来の様々な「ひきこもり」の国際レベルでの研究が可能になり、また精神医学以外の領域の福祉関係や心理関係の研究者にとっても極めて有用となる可能性が高く、本尺度を作成する研究は学術的意義が大きいことが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では2020年8月下旬に研究代表者がグラスゴー大学に滞在し、ひきこもりの国際標準尺度を完成させ、本尺度から得られた研究データついての英語論文の出版をグラスゴー大学の共同研究者らと検討し、また8月下旬以降はグラスゴーからフランスのストラスブールへと移動し、2020年10月上旬まで再び閉じこもりなどの理由で病院に来院が困難な患者の訪問診療を行い、本尺度の完成版を試験的に施行し再び臨床的な有用性を確認するはずであったが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る海外渡航の制限のために、英国やフランスに研究代表者が渡航することができなかった。 さらに2021年1月から3月には、研究代表者がフランスのストラスブールに滞在し、ストラスブール医学部精神科のセクター医療で研究代表者自身が訪問診療を行い、臨床的な有用性を再確認し、フランスでストラスブール大学医学部精神科のGilles Bertschy教授と共に、ひきこもりの国際標準尺度のフランス語版の作成について検討を行う予定であったが、同様に、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る海外渡航の制限のために、英国やフランスに研究代表者が渡航することができなかった。 以上の予定の中には、訪問診療の中で臨床的な有用性を確認するなど、オンラインに切り替えることのできないものも多かった。 一方、名古屋大学のひきこもりの診療録から、さらに、作成した尺度で評価した得点、年齢、性別、学年、精神医学的診断、ひきこもりの期間、生活状況、学業や仕事など社会参加の状況、社会的交流の状況、インターネットやゲームの没入の程度を抽出し、研究データの論文の作成については、日本に留まりながらもオンラインで研究協力者であるグラスゴー大学のHamish McLeod氏とMaki Rooksby氏らと行うことができ、2021年度に海外の学術専門誌に投稿するための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、昨年度は新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る海外渡航の制限のために渡航ができなかったたが、所属大学の渡航規制の条件が一部見直され、外務省の渡航制限がレベル3の場合でも、研究代表者は、新型コロナウイルス感染症リスク管理対策委員会が決めたいくつかの条件を満たし上長の承認が得られたので、特別措置として海外渡航ができるようになったため、2021年5月から、フランスに渡航してフランスのストラスブールに滞在し、ストラスブール医学部精神科のセクター医療で研究代表者自身が訪問診療を行い、臨床的な有用性を再確認する予定になった。また、フランスでストラスブール大学医学部精神科のGilles Bertschy教授と共に、ひきこもりの国際標準尺度のフランス語版の作成について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度に、研究代表者が英国のグラスゴー大学やフランスのストラスブール大学に滞在し、ひきこもりの国際標準尺度を完成させ、閉じこもりなどの理由で病院に来院が困難な患者の訪問診療を行い、尺度の完成版を試験的に施行し再び臨床的な有用性を確認する予定であったが、新型コロナウィルス感染症拡大防止のために海外渡航の制限を余儀なくされ、2020年度に予定されていた海外(英国とフランス)での研究活動全てが2021年度に延期することになったため、次年度使用の必要性が生じた。一方、研究データを基にした論文の作成は、日本に留まりながらもオンラインで研究協力者であるグラスゴー大学のHamish McLeod氏とMaki Rooksby氏らと行うことができ、2021年度に海外の学術専門誌に投稿するための準備が整った。
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