2019 Fiscal Year Research-status Report
福祉作業所をイノベーション・ハブに - 障がい者支援の新しいあり方の研究 -
Project/Area Number |
18K18599
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑原 教彰 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 教授 (60395168)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 知的障がい / 福祉作業所 / 価値共創 / デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
一方、本研究の効果を医療経済学の専門家により検証を行い自立に向けた方向性を調査、検討した。本調査では、就労継続支援B型事業所である、京都府福知山市の社会福祉法人の支払工賃の現状を調査した。主な事業内容は菌床栽培事業、食品製造事業、物品販売事業などであり、作業は利用者個々の技能・能力を精査して個人アセスメントを作成し3つの班に分かれて作業が行われる。作業工賃はポイント制が導入されており1日、最大日額2,000円となり1ヶ月20日の通所をすることで最大40,000円を作業工賃として得ることができる。ポイントは職員の評価で決定される。利用者の中には、作業能力を評価され、施設の所在地である京都府の最低賃金である時間単価882円を支給されている人がおり、この場合はポイント制での評価と支払いではなく時間給制となっている。時間単価882円×勤務時間=月額工賃となり、毎月の勤務状況によるが1日6時間~8時間の勤務をすることにより100,000円から140,000円の間の月額工賃を獲得している。 本調査から見えてきた問題は、国が障害者の自立支援を奨励する中で、障害者の程度にもよるが、職を得る場が限定されている障害者にとっては、支払い工賃という形では経済的な自立は困難であるということである。また支払い工賃が適正であるかという問題も生じる。本調査対象の施設では、導入されている作業評価のポイントを随時見直すなどの努力がなされているが原資は限られている。また、事業収入を増やすためには作業能力の高い利用者を集めるほうがよいという施設側の逆選択により、施設の適正利用という側面が歪められるおそれもある。 知的障害、および知的障害に加え他の障害を合わせ持つ方の就労支援は非常に難しい。障害の程度によって就労支援の仕方を細分化し、労働に見合った収入を得ることが出来る仕組みが作られることが望まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福祉作業所と学生、専門家チームにより、新たな商品開発に着手することができ、作業所のメンバー(知的障がい者)の作業工程に落とし込むところまで実現した。丹後ちりめん創業300周年のイベント性もあり、地域の商工会議所も関心を示しており、商品開発の成功が期待される。 またB型福祉作業所における賃金体系の成功例として、優れたメンバーには雇用契約を結び最低賃金を適用することでモチベーションを大きくアップさせた事例を深堀できた。必ずしも多くの福祉作業所に適用可能なモデルではないかもしれないが、障がい者雇用の一つの成功例として興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度には、自治体、地域の大学、地元企業がデザイン、地域経営、人材育成を行いながら、作業所をイノベーション・ハブとして活用し、地域の一つの機能として自立できる社会を実現する。そしてそれら必要な知識を整理して学際的な新たな学問体系を構築することが目標である。
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Causes of Carryover |
先方都合による予定していた京丹後市への出張の中止のため、それ相当の次年度使用額が生じた。今年度の出張旅費に充当する。
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