2018 Fiscal Year Research-status Report
重大な環境被害を受けた中山間地域におけるリスクベースの社会・生態的環境の再生
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18K18602
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阿部 浩和 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (20346125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 智子 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30351240)
ルプレヒト クリストフ 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (90783895)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 社会・生態的環境 / 地域再生 / 文化的活動 / 環境被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主として「コミュニティの主体的連繋と人的ネットワーク」及び、「農林業と一体化した文化的活動と地域創生」の課題に取り組んだ。日本では東日本大震災による原発事故で甚大な被害を受けた福島において避難指示区域に指定され一昨年4月に避難解除された地域とその近傍にあって避難指示が出されなかった地域を対象としてその環境変化と住民の取り組みについて現地調査と関係者へのヒアリング調査を実施した。その結果、いずれの地域でも多くの自主的な取り組みがその復興に重要な役割を果していること、特に避難区域外の東和地区には震災前から活動しているNPO組織の枠組みがあり、人々と地域を包括的につなぐための役割を果たしたことが明らかとなった。一方6年以上避難指示区域であった山木屋地区はこれまで住民同士を強く結びつける公的、私的な組織体制がなかったため、それぞれ独立した活動が目立っていたが、その中にあって帰還した住民とそれを支援する外部ボランティアの活動が徐々に成果を上げつつある。また英国北西部チェシャー地方においていずれも鉱工業よって重大な環境被害を受けた2つの地域を対象に環境変化と住民の取り組みについて現地調査と関係者へのヒアリング調査を実施した。その結果、2つの事例に共通する特徴として林業と一体化した文化的活動が存在すること、そしてノースウィッチにおける産業遺産群の保存活動とセントヘレンズのコラボレーションアートワークには複数のパートナーシップが存在し、それによってサイトを長期的に維持管理するための多様な資金源と人材を確保している。これらは環境被害を受けた中山間地(カントリーサイド)における社会・生態的環境再生のための重要な手がかりであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は日本と英国で重大な環境被害を受けた中山間地の再生事例の現地調査等が実施できた。またその成果について国内外の研究者を交えた研究会で議論するとともに、国際会議等において発表しており、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、当該地域の調査を進めるとともに、残る①スティグマ解消とリスクコミュニケーション及び、②経済的自立と都市農村共生・交流の2つの課題に取り組むとともにこれまでの調査結果を整理し重大な環境被害を受けた地域の社会・生態的環境再生のためのスキマティックプラン(段階的プラン)を検討する。
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Causes of Carryover |
外部有識者、専門家とのリサーチミーティングにかかる費用や招待講演などを当年度内に実施できていないために次年度使用が生じた。
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