2020 Fiscal Year Research-status Report
子どもの貧困指標開発と政策との結合に向けた探索的研究
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18K18610
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山野 則子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (50342217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嵯峨 嘉子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (30340938)
所 道彦 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (80326272)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 子どもの貧困 / はく奪指標 / プログラム評価 / EBP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は以下の2点である。まずは、(1)2016年度受託実施した大阪府子どもの生活実態調査を基に子どもの貧困の構造を分析することである。そして、その結果を貧困線にどう用いることができるのかを含めた子どもの貧困の指標の開発を目指す。(2)として、(1)で開発した子どもの貧困の指標並びにプログラム評価の理論を援用して、貧困対策における有効性が実証された科学的根拠に基づく実践(Evidence-Based Practices:EBP)プログラムの効果モデルの構築を目指すことである。 これまでの(1)の取り組みによる指標の開発成果の検証のため、学校現場における児童の課題の認識・支援につながるシート(YOSS:Yamano Osaka Screening Sheet)を開発し、これに成果を反映させることで、(1)の取り組みの実践面における妥当性の検証体制を整えてきた。またこれら指標の汎用性を検証するため、(2)の取り組みを、これまで大阪府・沖縄県で行ってきた取り組みから拡充し、より多くの主体による広範な実施を得る取り組みを進めてきた。上記シートの開発と並行し、希望する市区町村教育委員会、小・中学校の協力により学校現場での利用の拡大を進めるとともに、利便性向上のためのシステム開発を行った。この中に、上記シートにおいて設定された項目に関するこれまでの情報の蓄積に基づくAI判定を組み込み、シート入力・これに基づく議論の実践現場における子どもの貧困の特定・支援における有用性の向上を企図したシステム開発の取り組みを進展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)の取り組みに関しては、子どもの貧困指標(はく奪指標)を応用し、子どもの課題に対するスクリーニングを行うシートの開発を進展させた。またこれにより得られたデータに基づいてAI判定を組み込んだシステムを開発した。 また(2)について、上記(1)の取り組みに基づき、上記のシートの活用の拡充・利便性の向上を企図し、(1)において開発したAI判定プログラムを組み込むことで、単に利便性を高めるのみでなく、教育現場における潜在的な貧困を含めた子どもが抱える課題のスクリーニング、またこの結果を受けた教員間の議論に基づく子どもの貧困に関する情報共有、その支援の際に有用性が高いツールとなることを目的とし、ウェブベースのスクリーニングシステムの開発を行った。これと並行し、より多くの学校現場において子どもの潜在的な貧困のスクリーニングを行うことを企図し、従来のスクリーニングシステムの改良版を用いた取り組みの協力自治体を拡充し、実践現場からのフィードバックをより多く得られる体制を構築した。 イギリスやフィンランドの仕組みに関して交流の後、スクリーニングシステムの再検討と子どもの貧困に焦点化したスクリーニング分析をさらに深めている。 海外の研究のレビュー、また海外研究者との交流として、Carol Rippey Massat, Michael S. Kelly, and Robert Constable (Ed.), School Social Work: Practice Policy, and Researchの日本語版:『スクールソーシャルワークハンドブック 実践・政策・研究』の監訳を行った。この出版に伴い、原著の編著者のうちキャロル・リッペイ・マサット教授(インディアナ大学)、マイケル・S・ケリー教授(ロヨラ大学シカゴ校)、また監訳者、一般参加者を交えた国際シンポジウムを主催し、オンラインにて開催した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)の取り組みにより構築されたスクリーニングシートのうち、学校内のチーム会議において議論される子ども、また潜在的な貧困への対策を含めたこれら子どもに対する支援策に関し、得られたデータに基づくAIによる分析等を通じて、シート上に設定した項目の実践現場における妥当性を検証していく方針である。また(2)の取り組みとして、これまでの評価自治体であった大阪府・沖縄県内の自治体、また昨年度までの協力自治体における新システムへの切り替えを進めるとともに、他の自治体におけるスクリーニングシステムの導入を進めることで、実践現場において子どもの貧困状態を把握し、支援を機動的に行う仕組みをより全国的に行い、これによって得られた情報を基に、さらに精度の高いAI機能を含む子どもの貧困に対するスクリーニングシステムを構築することで、学校現場におけるEBPの質を向上させる取り組みを進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う予防対策のため、当初予定していた研究会、視察等が予定通り実施できなかったため、次年度使用額が生じた。これに関して、2021年度に予定をしている研究活動・研究会等に充当する計画である。
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