2018 Fiscal Year Research-status Report
A comprehensive study on the concept of an capacity of receiving aid in community
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18K18613
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
桜井 政成 立命館大学, 政策科学部, 教授 (90425009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋吉 恵 立命館大学, 共通教育推進機構, 准教授 (00580680)
桜井 良太 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00749856)
菅 磨志保 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60360848)
富永 京子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70750008)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 受援力 / ボランティア / 災害支援 / 支援 / サービスラーニング / 地域活性化 / よそ者 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまで災害研究において言及されてきた、地域コミュニティが支援を受け活用できる能力とされる 「受援力」について、実証研究を踏まえその概念を明確にすると共に、他の研究領域でも幅広く使えるよう検証・再定義し、その応用可能性や地域での向上方法を検討するものである。「受援力」概念は災害研究においても厳密に定義された研究はなく、そのため実証的分析もほぼない。同時に(あるいは、にもかかわらず)、防災政策・実践においては一定程度流布している用語でもある。受援力が注目されるようになった背景には、東日本大震災の被災地において、発災直後、支援、とりわけボランティアの受け入れが低調な地域が多かった経緯がある。加えて日本の地域社会は、災害時に限らず外部からの支援を活用せざるを得ない場面が増加している。近年、高齢化や過疎化等により地域コミュニティでのインフォーマルな機能維持能力は低下しつつある。あわせて、観光や特産品開発などによる地域経済の活性化に向けても、地域にはない発想・資源の活動が求められる。 本年度は3カ年である研究計画のうちの1年目であり、外部支援活用が成功したと考えられる地域の地域団体、NPO、観光協会、行政職員、専門家等への、「受援力」に主眼に置いた、半構造的インタビュー調査を行うことを予定していた。結果として5名以上のキーパーソンから話を聞くことができた。その結果を踏まえ、研究仮説の修正を行うこととなった。また、実際に地域の受援力がどう高まり役立つか、実験的取組から検討するために、大学のサービスラーニング型授業と連携して地域活性化の協働取組を特定地域と行い、その中で参与観察や関係者インタビュー等を行い、プロセスの質的分析を行うなどを想定していた。本年度は準備段階ながら、以上の研究状況を踏まえた、中間報告的な成果報告・発行をいくつか行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は3カ年である研究計画のうちの1年目であり、外部支援活用が成功したと考えられる地域の地域団体、NPO、観光協会、行政職員、専門家等への、「受援力」に主眼に置いた、半構造的インタビュー調査を行うことを予定していた。実施した対象者は、大阪北部地震でボランティアを受け入れた災害ボランティアセンター関係者、岡山県の大学で学生の地域参加型授業を行う担当者、宮城県の大学のボランティアセンターの職員、長野県の商店街で大学生を受け入れ地域コミュニティづくりを行なっている関係者、東京都の商店街で大学生を受け入れ地域コミュニティづくりを行なっている関係者、北海道での関係者の、合計6名に話を聞くことができた。 調査計画においてはおよそ10名以上の関係者にヒアリングを行い、その結果を質的に分析し、「受援力」についての構造的な言説分析を行う予定であった。しかし、現段階で集まったデータを中間的に分析をすることによって、当初予定していた、研究仮説について、多少の修正も必要であることが見えてきた。具体的にはそのデータは、受援力を概念化し、その指標づくりに寄与させる予定であったが、加えて受援のプロセスを明確化させ、そこに正の影響を働きかける要因や、具体的なイベントを理解することが重要であることが見て取れた。このことは研究の今後のプロセスに影響を与えることとなる。 また、6月には大阪北部地震が発生し、研究拠点も大きな被害を受け、一時、研究が停滞する事態となった。しかし同時に、その大阪北部地震における被災地支援活動を研究対象とするという方向修正を取ることも可能となり、結果として研究全体の進捗をいくらかカバーすることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目においては、まず、引き続きキーパーソンへのインタビュー調査を行なっていく。とりわけ災害現場における支援の受け入れ関係者への聞き取りが不十分なため、この点を考慮し調査対象の選定とアプローチを行う。 加えて、受援力を測定するための量的な調査、およびアクションリサーチを行なっていく予定となっていた。1年目にキーパーソンインタビュー調査を実施することで見えてきたことと、大阪北部地震という大災害が研究拠点で起きたことによって、上記の研究の計画を多少修正する必要が出てきた。第一に量的調査については、まず、大阪北部地震被災地を対象として、非常時にボランティアを受け入れる要件についての探索的検討を行いたい。大阪北部地震の被災地は都市部であり、そうした地域性が現れたボランティアの活動となっていた。この調査によって、都市部における受援力の有り様と、それによる災害ボランティア受け入れの特徴が明確化されることが期待される。加えて、当初の計画に沿った形での、農村部での受援力測定の調査についても可能性を模索したい。ここでは住民の意識調査を行うことによって、移住者や地域おこし協力隊、大学生によるボランティア活動などを想定して、その受け入れが活性化する要因について、集落単位や個人単位での分析を行えたらと考えている。 続いてアクションリサーチにおいては、1年目の調査から見えてきた、受援力形成のプロセスを明確化する必要性があり、それをいくつかの評価指標を用いて検討したい。具体的には大学での地域参加型の授業をそう停止し、そこでルーブリックを応用したアセスメントシートを作成し、それを大学と地域とで共有し、中間評価、最終評価に用いることでどのような成果が見られるか、検討をする。地域参加は短期のものと、中長期のものを分け、さらには調査型と地域貢献型とを区別し実施する。
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Causes of Carryover |
本年度実施したインタビュー調査のテキスト起こし費用が執行されていないため、次年度に実施することとなり、その分が持ち越しとなっている。
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Research Products
(6 results)