2019 Fiscal Year Research-status Report
計算物質科分野・博士イノベーションリーダーの総合育成プログラムの開発と検証
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18K18619
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寺田 弥生 東北大学, 金属材料研究所, 特任准教授 (20301814)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 計算物質科学分野高等教育 / 博士人材 / 計算科学教育とヒューマンスキル育成の融合 / イノベーション創出人材育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度に引き続き、計算物質科学分野(以下、CMS)教育とヒューマンスキル育成のプログラムを融合した短期総合育成プログラム開発に必要なCMS博士人材の定量的な人数動向の調査研究を行った。2019年度は過去52年間(1965-2016)の国内理工系博士論文約14万報の詳細な解析に加え、アメリカの研究中心大学1校の博士論文約7千報の解析を行い、CMS博士号取得者数の人数推移を推定した。解析方法を改良したところ、日本の理工系博士号取得者総数に対するCMS博士号取得者数の比率が2018年度の解析結果よりも増加した。しかし、未だ10%未満で傾向の変化は無かった。一方、アメリカの研究中心大学ではCMS博士号取得者の人数比率は日本より多く過去50年間ほぼ10%以上で一定であることがわかった。さらに、アメリカと日本ではCMS博士号取得者の人数比率に違いがあるだけで無く、理論的研究とシミュレーション研究の比率を比較すると、アメリカの研究中心大学で最も理論的研究の比率が高く、次いで、日本の研究中心大学、日本の地方教育中心大学の順であることなどを明らかにしつつある。その他、近年台頭しているマテリアルズ・インフォマティクスやデータ科学などの分野は日本においても1990年代から博士論文が発表されており、特に2010年代に博士号取得者数が急増していることがわかった。 また、総合育成プログラムのモデルケースとして、代表者が所属する計算物質科学人材育成コンソーシアム(PCoMS)で実施したPCoMS合宿セミナー2019の事後アンケートなどの解析を行い、プログラムの有効性を検証した。その結果、講義では参加者が内容を難しいと考えると参加者の満足度が下がる傾向が見られるが、アクティブラーニングを取り入れたグループ課題実習では、参加者が内容を難しいと考えても参加者の満足度が比較的高い傾向にあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度に開始した育成プログラムの対象となる国内の計算物質科学(CMS)分野の博士号取得者数の人数推移やより詳細な解析は、アメリカの研究中心大学との比較なども加え順調に進めている。 しかしながら、代表者が所属する計算物質科学人材育成コンソーシアム(PCoMS)で2020年3月に実施予定であった企業の開発現場の問題について企業人材と博士人材がともに学ぶ研究会の実施が新型コロナウイルス感染症対策で中止となり、計算物質科学分野の教育とヒューマンスキル育成のプログラムを融合した短期総合育成プログラムの検証の一部を実施できなかった。さらに、今後の育成プログラムでは、新型コロナウイルス感染症に対する対策を講じる必要が生じており、プログラムの改良はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した日本国内およびアメリカの研究中心大学のCMS博士号取得者数の人数推移の解析の結果、日本の研究中心大学と地方教育中心大学、及びアメリカの研究中心大学でのCMS博士取得者数の人数推移の傾向について、人数比率だけでなく分野や研究手法にも違いが明らかになった。この結果は、この違いを踏まえた総合育成プログラムの開発が必要であることを示唆する。今後は、傾向の違いの原因などの解明を進め、その結果を踏まえて、まず、研究中心大学向けの教育プログラムを開発する。その後、それ以外の大学向けの博士人材の総合育成プログラムの開発につなげる。 また、本研究では、オンサイトでの合宿型短期総合育成プログラムの開発を念頭に研究を進めてきたが、今後、新型コロナウイルス感染症対策を考慮した育成プログラムの開発が必要となっている。このことを踏まえ、オンサイトとリモートでの研修などを有機的に組み合わせた総合育成プログラムの開発について検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初計画を修正し、2019年度も引き続き、国内やアメリカでの博士論文数などの調査研究を進め、教材開発のためのサーバーやソフトウェアなどを購入したが、2020年3月に予定していた研究会が新型コロナウイルス感染症対策のため中止となったため次年度使用額が生じた。 2020年度は、2019年度までに実施したPCoMS合宿セミナーの解析やCMS博士号取得者数の人数動向の解析から得られた知見や、新たに新型コロナウイルス感染症対策も講じた総合育成プログラムを開発し、開発した総合育成プログラムの実施と検証を行う。 さらに、2020年度は開発した育成プログラム実施や本研究の補助に必要な技術補佐員の雇用を予定している。
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Research Products
(7 results)