2018 Fiscal Year Research-status Report
児童・生徒の地理・歴史リテラシーを育む「地歴統合型授業」の開発と実証的検討
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18K18628
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤村 宣之 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (20270861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 優美 共立女子大学, 家政学部, 助教 (60804797)
鈴木 豪 横浜商科大学, 商学部, 講師 (40802905)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 地歴統合型授業 / 教育心理学 / 教科教育学 / 概念的理解 / リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,児童・生徒の地理・歴史リテラシーの育成方法を明らかにするために,(1)社会科・地歴科教科書,実践資料等における発問の分析,(2)小学校・中学校・高校における「地歴統合型授業」のプロセスと効果の分析,(3)小中学校における「地歴統合型単元」の開発と検証を行う。 (1)に関して,学会等で文献資料の収集・分析を行った結果,地理・歴史リテラシーの育成には,現代的な非定型問題を段階的に設定して(例:貧富の差がある状況下での共生に必要な事柄と必要な政策;産業の振興と持続可能な開発との関係と今後の展望)多様な理由を探究させること,世界の各地域の特質(地理的事象)やある地域の変遷(歴史的事象)の理由を探究させることが有効であることが示唆された。 (2)に関して,地理・歴史リテラシー育成の観点から,社会科・地歴科授業の観察を行い,生徒・教師の発話内容などにもとづいて概念的理解の深化過程を試行的に分析した。中学校社会科の授業では,鎌倉時代のある資料をもとに「何が売られているか。買っているのはどういう人か。店の経営に何が必要か」を問う非定型問題が設定され,クラス全体で協同探究が行われた結果,各地の特産品の売買,購入者としての農民や武士,現金の必要性と金融業者の出現,といった多様でかつ本質に迫る考えが引き出された。概念的理解を深めるには資料を多様な観点から検討する非定型問題が有効であり,地域的特性の検討により,地理的事象と歴史的事象が関連づけられて理解がさらに深まる可能性が推察された。高校世界史の授業では,前提問題(ある条件を満たす国の地理的特質)→導入問題(時代の異なる2つの資料にみられる主張の特徴と問題点)→協同探究→展開問題(当時の会議に参加した場合の発言内容)の順に展開することで,地理的分布と歴史的変化が関連づけられて概念的理解が深まることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「地歴統合型授業」の特質を有する社会科・地歴科授業の観察・分析を,校種を越えて開始しており,また,小学校・中学校・高校で社会科や地歴科を担当している教員に対する研究協力の依頼や研究打ち合わせなども進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の進展を生かして,次年度においては,各生徒の記述内容の分析も含めて,「地歴統合型授業」のプロセスと効果の分析を進めると同時に,「地歴統合型単元」の開発にも着手する。また,社会科・地歴科関連の授業実践資料の分析に加えて,現行の社会科・地歴科教科書に関する発問等の分析も開始する。
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Causes of Carryover |
本年度は,小中高の教員等,研究協力者への依頼と研究打ち合わせを行い,それらの研究協力者との実践協同研究については,次年度に本格的に実施・分析・発表を行うこととなったため。
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