2018 Fiscal Year Research-status Report
創造的問題解決におけるアイディアの有望性判断失敗メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K18639
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大島 律子 静岡大学, 情報学部, 教授 (70377729)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | 創造性 / 協同問題解決 / プロジェクト学習 / 有望性判断 / アイディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,グループで行う創造的問題解決場面において陥りがちな,アイディアの有望性判断の失敗メカニズムを明らかにすることである.そして明らかになったメカニズムを元に,失敗の予兆を捉える客観的手法を提案することを目的とする.これにより,学習効果が一様でなく,また授業設計に労力のかかるプロジェクト学習(PBL)の実施効果を高める授業デザインや,教授的介入の考案に寄与することを目指す. 初年度は,学習者が持つアイディアの有望性判断の基準とそのプロセスについて検討を行った.具体的には,そもそも学習者は創造的な問題解決を通じて導き出される様々なアイディアに対し,どのような判断基準やプロセスでそれらを採択・破棄し,創造的問題解決に成功・失敗しているのか?これらを明らかにするために,大学半期のプロジェクト学習を行う授業で収集したデータを分析した. グループ活動中に行った有望性判断などについて尋ねたレポート課題の記述内容を分析対象とした結果より,グループ活動の過程で行うことになるアイディアの有望性判断は,アイディアそのものの良し悪しではなく,それを形成する過程に価値を見出す傾向が強く「みんなで協力して作ったアイディアが良いアイディアである」という考えを持つ者が殆どであったことが明らかになっている.これを踏まえ,学習成果の向上を導く有望なアイディア選択とその向上プロセスについて,最終成果物の質の違いでグループ間比較を行った.学習支援システムに記述されたグループ活動の記録やグループ活動中の音声記録をもとに分析を行った結果,最終成果物の質が高いグループはアイディアの発展可能性を考慮した有望性判断を行う,あるいはグループ内で共通理解を深める議論を優先させる一方,発展可能性を考慮した有望性判断を行わないグループは最終成果物の質が低いことが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年間を通じて3ステップにより実施する予定になっている.ステップ1(初年度)では,学習者が持つアイディアの有望性判断の基準を解明することが目的であった. 実際には創造的な問題解決を通じて導き出される様々なアイディアに対して学習者が行う採択・破棄の判断基準や,その結果としての創造的問題解決の成功・失敗を明らかにするために,大学半期のPBL授業で収集予定であったグループの対話録画記録や学習支援システム上の記録,最終成果物など予定していたデータは全て収集を完了した.さらにこれらの情報を継時的に組み合わせグループの活動を包括的に捉えることで明らかになったアイディアの有望性判断基準の形成に及ぼす要因の検討を行うことを完了しており,計画は概ね予定通り進んでいると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
現在,分析対象グループを増やす形で前年度からの分析を継続して行い,失敗の仮説パターンを導き出す作業を行っている.導出した仮説パターンを検証するため,ステップ1と同じPBL授業でもデータ収集・分析を行い,仮説の検証を行う.データの収集・分析方法はステップ1と同じである.仮説が支持されれば,失敗の予兆が見られた時点で行う有効な教授的介入方法を考案する.仮説が支持されなかった場合には,ステップ2のデータも合わせ再分析・検討を行い,新たに仮説パターンを立てる.
|
Causes of Carryover |
消耗品については,ビデオデータ確認と収集データ保管用にパソコンと記憶装置を購入予定であったが,他研究の進捗遅れにより未使用であったものを借用できたため,購入を控えた.今年度は借用できないため,購入を予定している. 旅費については,予定していた外国出張が都合によりキャンセルとなった.今年度はキャンセルの可能性が現時点でないこと,併せて他の関連学会での情報収集を予定しており請求通り支出する予定である. 人件費については,分析対象データを絞りその分詳細な分析を行ったためデータ整理やシステム管理に要する人的労力が少なくなったが,今年度は同様の分析も含めて新たなデータ収集・分析を行うため,次年度に持ち越す形で作業が進められており,その分人件費が発生するものと見込んでいる.
|
Research Products
(2 results)