2019 Fiscal Year Research-status Report
多様な言語文化背景をもつ子どもたちの教科学習支援を目的としたメタファー研究
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18K18641
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鷲見 幸美 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (50340211)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 認知言語学 / メタファー / 語彙 / 教科書 / 教科学習 / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校・中学校で使用されている教科書に隠れた「概念メタファー」は、概念レベルのメタファーであるがゆえに、多様な言語文化背景をもつ子どもだけでなく、その教育に携わる教師・支援者にも、メタファーであることが気づかれにくく、教科学習のつまずきの原因となり得る。そこで、本研究は、「多様な言語文化背景をもつ子どもたち」の教科学習支援のための基礎的研究として、教科書に現れる「メタファー表現」を抽出し、その背後にある「概念メタファー」を明らかにして、データベース化することを目指している。 2019年度は、小学校低学年の教科書を対象として、メタファー表現の抽出を進めた。教科書から慎重に対象表現を拾い上げ、リストの網羅性、客観性を保つため、抽出された表現を研究協力者である松浦光氏と擦り合わせ、研究を進めた。また、「概念メタファーの体系的な提示」に関し、概念メタファーと写像の関係を含め、解決しなければならない問題があり、その問題の解決に向けて、検討を重ねた。 2019年10月30日には、松浦氏とミーティングを行い、データの検討、メタファー表現認定基準の見直し、問題意識の共有、方針・方向性の確認をした。 これまでの研究を踏まえ、2019年11月24日に、日本語教育学会秋季大会(くにびきメッセ(島根県))において、「概念メタファー理論に基づいた教科学習支援―社会科3・4年生教科書の分析を通して―」というタイトルで、多様な言語文化背景をもつ子どもたちの教科学習支援に「概念メタファー理論」を導入する意義について、松浦氏との共同発表を行った。質疑応答において、多様な言語文化背景をもつ子どもたちの教育に携わる複数名の教師・支援者から、本研究に期待する声が寄せられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、小学校の全教科・全学年の教科書のメタファー表現の抽出、概念メタファーの分析を完了させ、小学校卒業までに身に付ける必要のある概念メタファーの提示に向けて考察を進める予定であった。しかし、理論的な問題が解決できず、慎重に進める必要性が高まったことにより足踏み状態に陥り、高学年の教科書に着手できなかったことで、遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画に従って、「教科書のメタファー」の学年横断的、教科縦断的リスト化を進める。研究の成果を国内外の研究会・学会で発表し、論文としてまとめる。また、資料としてリストの公表を目指す。
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Causes of Carryover |
研究進捗状況の遅れにより、研究発表が国内の1回にとどまったため、旅費が予定額を下回ったことによる。
研究発表のための旅費、研究成果(リスト化した資料)を公表するための費用に充てる。
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