2018 Fiscal Year Research-status Report
幼小接続期の数理認識の発達に着目した評価スケールの開発
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18K18648
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡部 恭幸 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70425057)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 幼小接続期 / 数理認識の発達 / 評価スケール / サビタイジング |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の1つの目的は、数理認識の発達についての研究の知見に基づき、幼小接続期の幼児・児童を対象に調査や観察を実施することであった。 まず、基礎研究として、 先行研究などを調査し着目すべき数理認識として、数に関するものと図形に関するものを1つずつ抽出した。数に関するものとしては、概念的サビタイジングを中心とする「数をまとまりとして捉える」ことを抽出した。また、図形に関するものとしては、小学校以降(中学校、高等学校をも含む)の学習の困難性に関連があると考えられる「ディスエンべディング(図形の中に図形を見い出す)」を抽出した。 これらを能力を明確にするとともに、これらの能力の欠如に起因すると考えられる幼小接続期における学習の困難性についても整理をおこなった。さらに、スケール開発につながるしてんとして、現幼稚園教育要領に述べられている幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿について振り返る資料の開発と活用についても検討をした。また、スケール開発を考えるとき、幼児教育の前提となる「遊びを通しての指導」という立場は重要である。そこで、幼児期の数学教育における「遊びを通しての指導」について、フロー理論を援用をすることで、再検討を行った。 また、幼児期(5歳児)についての概念的サビタイジングの調査を実施した。 そこで得られた幼児期の数理認識のデータを今後詳細に考察することで、幼小接続の道筋を明らかにし、それを根拠に幼小接続期の特定の数理認識に関する評価スケールの開発が可能となり、今後の就学後の学習の困難性の解明や解消につながることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎研究として、先行研究などを調査し、着目すべき数理認識を明確にするとともに、幼小接続期における数や図形についての学習の困難性について概念的サビタイジングとディスエンべディングの視点から整理した。 それぞれ整理した成果等を、数学教育学会において「図形学習におけるつまずきの長期的要因に関する予備的研究ー領域「環境」と算数・数学への接続に着目して」、日本数学教育学会において「幼小接続期の概念的サビタイジングの発達に関する研究-数の合成・分解の学びのプロセスに着目して-」と題して発表を行った。 評価スケールの開発の基礎となる考え方として、幼児教育の前提となる「遊びを通しての指導」という立場は重要である。そこで、幼児期の数学教育における遊びを通しての指導について検討を行い、「幼児期の数学教育における「遊びを通しての指導」の再検討―フロー理論に着目して」と題して数学教育学会誌に発表した。 また、評価スケールの開発につながる、現幼稚園教育要領に述べられている10の姿について振り返る資料の開発と活用についても検討をし、日本保育学会において「5歳児の育ちと学びの姿を振り返る資料の開発-10の姿を活用しながら-」と題し発表を行った。 そして、幼児期の数理認識に関して概念的サビタイジングについて5歳児を対象に調査を実施した。 児童期(小学校第1学年、6歳児)についても次年度に調査を実施すべく準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、幼小接続期の数理認識に関してについて、5歳児(幼稚園児、年長)を対象に調査を実施した。この内容を基にして、次年度の児童期(小学校第1学年)も含めて次年度に調査を実施すべく調査方法の開発や準備を行ってきている。さらに、今年度の幼稚園で実施した調査結果の分析・考察や、次年度に幼稚園や小学校で行う予定である小学校での調査の結果の分析・考察を環太平洋幼児教育学会(Peccera)、日本数学教育学会、数学教育学会等で発表する予定である。 また、本研究の目的である評価スケールにつながる視点や考え方について今年度に引き続き検討するとともに、海外でのLearning TrajectoryやLearning Progressions等の先行研究で開発されたものについても分析や考察を同時に行い、日本保育学会もしくは日本乳幼児教育学会等で発表していきたいと考えている。 そして、これらの発表の成果をもとに、そこで得られた幼児期の数理認識のデータを今後詳細に考察することで、幼小接続の道筋を少しずつでも明らかしていきたい。そうすることで、その成果を根拠に幼小接続期の数理認識に関する評価スケールのの検討や開発が可能となると考えている。現在の日本には存在しない、就学後の学習の困難性の解明や解消につながる数理認識に焦点化した日本の幼児を対象にして評価スケールの試案を検討し、開発につなげていきたいとえ考えている。
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Causes of Carryover |
当初計画していた、文献研究の費用が、研究開始前からすすめる必要ができたため、不必要になったことと、海外での情報収集および発表が次年度に行うことになったため、次年度に執行することとなった。
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Research Products
(4 results)