2019 Fiscal Year Research-status Report
中山間地域の持続的発展を実現する「風景をつくるごはん」概念による教育の可能性探索
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18K18659
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中山 迅 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (90237470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真田 純子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (60452653)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 食と景観 / 中山間地域 / 持続的発展 / 小中学校教育 / 地域教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,中山間地域の保全への突破口を切り拓くことを意図して,「地表の調和」をテーマとし,「景観」と「食」を一体的にとらえる小中学校の理科及び総合的な学習の時間の教育実践モデルを作ることを目指している。2019年度は,2018年度に作成し実行した「風景をつくるごはん」ゲームのさらなる実施および改良,食と農業の関係について調査研究を行った。2019年10月に,宮崎県の日之影町立日之影中学校,2020年2月に,横浜市立釜利谷中学校において教育実践を行った。これら2回の実施にあたっては2018年度の宮崎県日之影町の小学校における実施で農法の部分が伝わりにくかったという課題を踏まえて,カードの記載内容および,「自分たちの選択」による地域や地球の環境の変化を見えやすくするなどの改良を加えた。また,食と景観の関係について日本における理解の構造を把握し,教育内容に反映させるため,世界農業遺産と日本農業遺産の制度と実践の比較を行った。 宮崎県日之影町では,中学校第3学年の生徒を対象とした,2時間連続の授業を「教育課程外」の位置づけで実施し,同日の夕方から,地域の保護者を対象とした「家庭教育学級」を実施し,小・中学校での教育実践についての地域住民の理解増進に取り組んだ。中学生を対象とした授業について,自由記述式及びイメージマップによる事前・事後調査から,多くの生徒が自分が食べる食物の産地と,地域・国内・地球レベルの景観や環境を因果的に関係づけて理解したことが確認された。農法についても,一部の生徒ではあるが,景観・環境変化の原因として理解したことが確認された。 開発したゲーム形式の教材については,土木学会 景観・デザイン研究会で発表し,それを使用した教育実践の効果については,日本理科教育学会,日本科学教育学会,日本サイエンスコミュニケーション協会に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に開発したゲーム形式の教材を用いた教育実践を重ね,ゲームのルールの改良,およびゲームの進め方,進行時における教員等の情報の与え方についてさらに改良するための検討を進めている。ゲームの進め方については,2ラウンドを1セットにすること,1ラウンド目は食べ物の情報を見ずに選択し2ラウンド目に主体的に選択する方式にすることが有効であることが分かった。また,進行時の情報の与え方については,ゲームの導入時,1ラウンド目の終了段階,2ラウンド目の終了段階にそれぞれ与えるべき情報があるため,それを整理しているところである。自分たちの選択が国内の環境や地球環境を模したボードに与えた影響をわかりやすくするため,その場で写真を映し出して比較できるようにするなどのビジュアライゼーションが有効であることが分かった。 教育実践の効果について,授業を受けた小学生や中学生を対象とした調査やビデオによる記録分析による評価を行った。2018年の2月に小学校で実施された授業については,自由記述による「食べ物を手に入れるときに気をつけること」の事前・事後比較,「今回の学習で,初めて知ったこと」についての事後調査や,「米と野菜」及び「肉」を中心ワードとするイメージマップの事前・事後比較の分析を実施して,「産地」と「景観・環境」との因果的な関係についての理解が進んだことを確認し,学会に発表した。2019年の10月に,同じ地区の中学生を対象とした授業と保護者を対象とした「家庭教育学級」を実施し,中学生は「産地」だけでなく「農法」についてもある程度の理解が進んだことを確認し,一部の分析結果を学会に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,2019年度までに開発し,改良したゲーム教材や教育実践の評価についての分析を進めて,国内外の学会で発表する。中学校での教育実践については,イメージマップ分析のみの発表に留まっているため,自由記述調査の結果などについても分析して発表する。ただし,新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまでは,国内・海外ともに現地での学会の中止決定が相次いでいるため,成果発表については計画が遅れることも覚悟しておかなければならないと考えている。 この計画で開発している「風景をつくるごはん」について,学校内での教育を実践として浸透させるには,地域住民(保護者)の参加も重要である。なぜなら,生産地である農村,消費地である都市部ともに,地域住民の意識や行動は農業政策や農業,購買行動など実際の生活に根差しているからである。そこで,生産者や消費者に現状を客観的に理解してもらうためには,日本における食と景観の関係についての理解の構造を把握する必要があるため,これらについて調査し,伝えるべき情報について,さらに整理をすすめていく。
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Causes of Carryover |
年度末の2~3月の時期に,実証実験の対象地域や学校を訪問して,当該年度の研究についての報告と今後の取り組みについての打合せを実施する予定であったが,新型コロナウイルスの感染拡大のため実施を延期した。同様に,研究チームでの研究打合せ会議も年度内の実施を見送らざるを得なかった。研究成果を発表する計画であった学会も現地での開催が中止になったため,出張旅費が使用できなかった。これらの理由で,予定されていた計画を次年度に先送りすることとなった。
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Research Products
(11 results)