2022 Fiscal Year Research-status Report
就職困難学生の自己肯定感と保護者の認識、およびトライアル育成に関する調査・研究
Project/Area Number |
18K18664
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
天川 勝志 聖徳大学, ラーニングデザインセンター, 准教授 (70709758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉井 紀子 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 准教授 (50739183)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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Keywords | 自己肯定感の親子間連鎖 / 就職困難学生の育成課題 / 保護者と学生(子)の重層支援の必要性 / 社会・組織における評価基準 / 家族一体型キャリア形成支援 / 家庭生活の満足度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)就職活動に困難を抱えている学生の意欲・態度等を、保護者への研修・指導を通して、改善・回復させ、就職活動、正規雇用化を促進すること、及び(2)学生のキャリア発達にあたり「家族を基軸としたキャリア形成支援学」の必要性を提唱することにある。 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、保護者向けセミナーも中止となり、就職活動学年の学生、及びその保護者へのアンケート、ヒアリング調査が中断しているが、これまでのアンケート結果を分析すると、次のようなことが解明されてきた。 <アンケート調査の結果>学生456名、保護者45名の分析を行った結果、保護者から見た学生の自己肯定感と、保護者自身の自己肯定感、及び学生自身の自己肯定感に正の相関が認められた。一方で、いずれの自己肯定感も、保護者の就職活動への不安と関連しており、これらの自己肯定感が低いほど、保護者の不安が高くなることが示された。また、アルバイト経験がある学生は、全く経験がない学生に比べて自己肯定感が高く、実習経験(数)が豊富な学生、大学への満足感が高い学生ほど、自己肯定感が高いなど、大学での活動や主たる学外活動に自己肯定感が関連していた。その他、保護者から見た学生の自己肯定感の評価が低い場合には、就職活動において、保護者が学生にプレッシャーをかける、口出しをするといったネガティブな関わり方になる傾向があり、評価が高い場合は、子どもの活動のやり方を信じているといったポジティブな関わり方になる傾向が示され、自己肯定感の高低が就職活動や自己PRの作成、今後の継続した就労に影響を与える可能性が示唆された。また、就職活動に対し、不安視している保護者、学生はいずれも9割程度と非常に高いこと、保護者は現在の就職活動内容への理解がないため、いっそう不安を助長していることなどが明らかになってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、対象である就職活動学年の学生、及び保護者へのアンケート、ヒアリングが中断してしまっている。 本研究の主たる目的は、親子間における自己肯定感等の意識・意欲の連鎖を究明することにある。そのため、保護者との面談が不可欠であるが、年2回実施していた保護者向けセミナーが、いずれも中止(動画配信、もしくはオンライン)となり、保護者との接点が持てない状況となっている。それを補填するため、一部の保護者とはメールにて、お子様(学生)の就職活動状況を報告してもらい、自己肯定感の親子間連鎖を究明中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度実施のアンケート結果にて、次のような相関性は確認している。 ①就職活動学年の学生のアルバイト経験、学外活動、実習経験数などと自己肯定感(活動の多い学生ほど、自己肯定感も高い)。②保護者から見た学生(子)の自己肯定感の評価の高低と学生(子)への支援法(評価が低いほど、保護者がネガティブな関わり方になる傾向にある)。また、保護者はお子様(学生)の就職活動への理解がないこともあり、いっそうの不安を抱いている。 今後は次の2つのことを重点的に究明していく。 1)就職活動前後の学生の自己肯定感の変化、及び関連する要因についての分析:学生自身の就職活動前後のアンケートは取得済なので、就職活動前後の自己肯定感の差異と内定先への満足度、内定先での想定勤続年数、保護者との関わり等の関連性を分析していく。 2)「家族を基軸としたキャリア形成支援学」の必要性の提唱:本研究の目的のひとつとして、学生のキャリア発達にあたり、家族を基軸としたキャリア形成支援学の必要性を提唱したい。「家庭生活の満足度国際比較調査」(ISSP)でも、我が国の家庭生活の満足度は男女とも下位にある。また、内閣府調査「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成30年度)」でも、若者にとって、父親・母親を「生き方の手本となる」との回答は7か国のうち、最下位である。こうした背景には、保護者の就業時間、及び子どもの学業に割く時間が長いことなどが関わっていると指摘されている。しかし、子どもの特徴をもっとも把握しているのは一義的には保護者であり、社会との円滑な接続を支援できる立場にある。今後、親子で学べる基礎的・汎用的スキル等の育成に関するツールを開発していく。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウイルス感染拡大により、保護者、及び学生への事後アンケート、保護者との面談ができなかった。本調査・研究では、学生の就職活動前と事後アンケートを行うことにより、就活の評価、及び自己肯定感の変容を見ることも対象としていた。しかし、こうした調査ができなくなってしまったため、印刷費、保護者への謝金、出張費等の支出がなかった。 使用計画:本調査研究の集大成として、2019年度のアンケート結果をもとに、保護者向けの研修教材を制作する。また、対面による保護者向け研修、大学等の教育機関、就労支援機関にて、研究成果の周知を行う。そのため、印刷費、旅費等に使用予定である。
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Research Products
(1 results)