2018 Fiscal Year Research-status Report
適応的な学習支援を目指した生体情報計測による学習活動のモニタリング手法の確立
Project/Area Number |
18K18670
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森田 裕介 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (20314891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長野 祐一郎 文京学院大学, 人間学部, 准教授 (00325870)
長濱 澄 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (50779270)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 生体情報 / 皮膚コンダクタンス / アクティブラーニング / 覚醒度 / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,学習者の生体情報計測を行うため,IoT皮膚コンダクタンス測定器の作成ならびに対面授業における学習者の生体情報リアルタイムモニタリングを行った. まず,IoT皮膚コンダクタンス測定器(以下,測定器)の作成については,教室内の学生全員のデータをパラレルに測定するため,学習者の手首に装着可能なサイズの電子基板を切削マシンで作成し,電子部品(抵抗,ダイオードなど)を手作りで半田付けして50台作成した.また,ケースは3Dプリンタで作成し,無線LAN経由でデータを蓄積できる仕組みを構築した.この研究成果は,現在論文投稿中となっている. 次に,作成した測定器を用いて,対面授業場面において計測を試みた.大学生48名を対象に,ホワイトボードに描かれた的に向けて,銃型玩具で吸盤つきダーツを発射し,得点を競いあう射的課題を実施させ,皮膚コンダクタンス(SC)を測定した。実験の結果,多数の学習者のデータを同時に計測できることを確認した.一方で,遠隔授業での生体情報計測モニタリングを実施するため,計測装置を自宅に持ち帰らせ,データを収集する試みも行った.分析の結果,データ収集は可能であるが,活動の様子が明確でないため,記録方法を検討する必要があることが明らかになった. 続いて,対面授業での生体情報計測モニタリングを実施するため,人間科学部講義「教育工学」を事例とし,講義,授業内実験,ディスカッションの3タームを設け,SCを用いて参加学生の覚醒度を測定した。実験では,参加者に測定器を装着し,授業を受講させた.大学生20名についてデータを収集した結果,アクティブラーニング時の学習者の覚醒度は,講義視聴中と比較して,有意に高いことが明らかになった.現在,グループ活動における各学習者の覚醒度をティーチングアシスタントが外見から判断できるか否かについて分析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は,IoT皮膚コンダクタンス測定器の作成ならびに対面授業における学習者の生体情報リアルタイムモニタリングを予定通り行うことができた. IoT皮膚コンダクタンス測定器(以下,測定器)は,共同研究者の長野祐一郎氏が長年蓄積したノウハウを持っており,問題なく作成することができた.また,実際の教室における50人程度の同時計測も,問題なく実施できた. 対面授業での生体情報計測モニタリングでは,皮膚コンダクタンス(SC)の計測以外に,学習活動の記録を行った.360度カメラによるグループ活動の記録とSCとの時系列変化についての分析は終了したが,グループ活動における主観評価との関連性については,分析に時間を要している. 一方,遠隔授業での生体情報計測モニタリングについては,いくつかの問題が明らかになった.計測装置を自宅に持ち帰らせ,データを収集する場合,それぞれの計測環境(温度・湿度)の相違や,行動の記録が必要となる.今回の研究計画では,この状況を想定していなかったため,問題をどのように解決するか検討を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は大きく分けて2点ある.ひとつは,対面授業における生体情報モニタリングの実験結果のまとめ,もうひとつは,遠隔授業での生体情報計測モニタリングにおけるデータ収集方法の再考である. 対面授業での生体情報計測モニタリングでは,皮膚コンダクタンス(SC)の計測結果と,360度カメラによるグループ活動の記録を合わせた分析をすすめている.この分析の目的は,アクティブラーニングのパフォーマンス評価におけるルーブリックの妥当性検討と同義である.ティーチングアシスタントと授業に関係ない学生とでは,学習者の活動はどのように見えるのか,ティーチングアシスタントが行うパフォーマンス評価で測れないものは何かが明らかになれば,今後のアクティブラーニングの評価方法に有意義な示唆を与えられる. 次に,遠隔授業での生体情報計測モニタリングにおけるデータ収集方法についてである.現在,温度並びに湿度を自動計測し,合わせて記録する方法を検討している.また,学習活動の状況を把握する方法として,3軸ジャイロセンサによる加速度の計測も考えられる.これらを同期させ,複合的な評価指標として測定可能な機材の開発を行うことが当面の課題である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,次の4点である.1点目は,皮膚コンダクタンス計測器の作成を手作りで行っているため,量産できなかったことである.2点目は,成果発表のための出張費を使用していないからである.研究費配分が9月だったため,実質半年での研究であった.そのため,学会発表することが難しかった.今年度は国際学会での発表も行う予定である.3点目は,謝金である.実験参加者が少なかったため,すべての謝金を使用しなかった.4点目は,遠隔授業を想定した生体情報計測を行う場合に必要な運搬費を使用しなかったためである. 今年度は,計画的に使用する予定である.
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