2021 Fiscal Year Research-status Report
幼児のためのアプローチカリキュラム「言葉領域モデルプログラム」の開発と運用
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18K18673
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
大島 光代 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 准教授 (00639164)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 幼小接続期 / 「言葉」領域 / 年長児の言語力 / 「たんけん・ぼうけん・ひらがな」カード / 経験の言語化 / 文字認知 / 発達性読み書き障害の前駆症状 / 追跡調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は1年間の延長を申請し、2021年度の研究は4年目となった。3年目の2020年度は、小学校2年生(2018年度に言語力の実態調査を実施した児童)を対象に読書力診断検査(図書文化社)の低学年(1・2年生用)を実施した。年長児の11月に実施した言語力の実態が大きく影響を与えていることが確認されたが、追跡調査を実施した小学校2校のうち追跡調査の対象となった児童は20名余りであったため、4年目の2021年度は、別の小学校2校の3年生を対象に追跡調査を実施した。3月に小学校より言語力調査の結果を回収し、現在分析中である。 聴覚障害幼児への言語獲得・言語力向上を目指した人工的な介入で用いられるスキルを活かした「たんけん・ぼうけん・ひらがな」カードを開発し、H幼稚園M保育園で試行している。年長児に負担をかけず、より簡便に実施できる検査を考案した検査を用いて、H幼稚園の年長児96名を対象に、教材カードを用いた「言葉による伝えあい」活動(文字認知含む)の事前(7月)・事後(2月)に検査を実施した。その結果は、現在分析中である。一部の分析結果からは、平仮名の読みが困難な幼児の1回目(事前)・2回目(事後)の結果を比較したところ、1回目(事前)テストで、平仮名1文字の読みが困難な(特殊音節38文字のうち正答数が9文字以下で清音と特殊音節を合わせた84文字の半分以下の正答数・音読がたどたどしいもしくは読めない)幼児は9名(男子4名、女子5名)であったが、教材を試行した後の2回目(事後)は、2名(男子2名)となった。平仮名音読が困難である場合、書字も難しかった。7月の時点で文字認知がすすまない幼児は10%であり、発達性読み書き障害の前駆症状であることが予測されるが、言語環境を整え、経験の言語化・文字認知促進を目指す実践には、そのような困難を改善する方策としての有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画の中には、幼児教育施設の保育士や教員を対象に、「言葉」領域で取り扱う活動や遊びの目標や内容の現状、潜在的に存在している「発達性読み書き障害児」に関する認識・意識、幼小接続期に育む「言葉の力」に関する認識・意識、さらに就学後の小学校教育を視野に入れたアプローチカリキュラムの必要性や小学校教員に期待すること等を質問紙による調査実施を予定していた。しかし、2020年度からのコロナ禍における大学の遠隔授業対応や、幼児教育施設における外部の立ち入りが困難な状況を受け、計画が思うように進まなかった。質問紙調査の受け入れ先の幼児教育施設を探す難しさが、大きな壁となった。質問紙調査の実施のほかには、独自に開発した簡易版の言語力テストの実施に加えた標準化された言語力テスト(発達性読み書き障害の疑いをさらに明確化する)の実施についても同様に困難な状況であることが、研究計画遅延の要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
「言葉領域モデルプログラム」開発に向けて、具体的な教材や活動内容のコンテンツ開発を継続して行うと共に、幼児教育施設の保育士や教員を対象に、「言葉」領域で取り扱う活動や遊びの目標や内容の現状、潜在的に存在している「発達性読み書き障害児」に関する認識・意識、幼小接続期に育む「言葉の力」に関する認識・意識、さらに就学後の小学校教育を視野に入れたアプローチカリキュラムの必要性や小学校教員に期待すること等を質問紙による調査を実施する。そのためには、幼児教育施設の現場で教員や保育士と保育実践等の研修や協働を実践している大学教員を研究協力者とすることにより、質問紙調査の協力を具体化していく。 また、アプローチカリキュラム「言葉領域モデルプログラム」の教材として開発した「たんけん・ぼうけん・ひらがな」カードを試行した後に、実際に実践した保育者の感想や意見を集約し、より使いやすい改訂版を制作する。さらに、「たんけん・ぼうけん・ひらがな」カードの教材を活用する手順や方法をまとめることにより、アプローチカリキュラム「言葉領域モデルプログラム」の完成を目指す。
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Causes of Carryover |
昨年度は、2020年度年明けから新型コロナウィルス感染状況が広がり、フィールドワークが困難な状況となったことに加え、研究協力者の大学教員との連携・協働が十分に行うことができなかったため、質問紙調査項目の精査及び作成と調査の実施が困難であった。研究協力者である大学教員も、コロナ禍における大学での対応(遠隔授業・教育実習や保育実習の中止等への対応)に時間を割かざるを得ない状況があったため次年度使用が生じた。また、発達性読み書き障害が疑われる幼児の就学後の困難を軽減するための「音韻意識獲得」「文字認知促進」を目指す教材開発は、実際に教材を製作するには至らず、この要因には先述した事由が挙げられる。2022年度は、質問紙調査の実施に向け現場実践に強い研究協力者と共に、研究協力を幼児教育施設に求める。さらに、今年度は所属専攻が変わり、実習担当としての業務が軽減されたため、教材制作に集中していく。
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