2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18686
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木村 英司 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (80214865)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
Keywords | 実験系心理学 / 瞬目 / 瞳孔 / 視覚的意識 / 認知評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、連続的フラッシュ抑制と呼ばれる知覚的競合条件下での、刺激の見えの切り替わり(視覚的意識の更新)に瞬目が及ぼす効果を検討した。その結果、瞬目を意図的に行わせると、その直後に、刺激の見えの切り替わりが頻繁に生じるようになる、というこれまでの知見に加えて、意図的に眼を見開くことによっても同様の見えの切り替わりが生じることを見いだした。これは、能動的な眼瞼制御の基礎となる神経過程が視覚意識の更新を変調しうることを示唆している。また、見えの切り替わりが自発性瞬目の頻度を高めることも明らかとなってきており、瞬目と視覚意識の更新に双方向性の関係が示唆される。 持続的注意課題遂行中の瞳孔反応に関しても検討を進め、ランダムな遅れ時間の後に変化する視覚刺激を参加者が監視している状況では、瞳孔径が時間の経過とともに散大していくこと、そしてその散瞳の大きさは、同一実験ブロック内での遅れ時間の相対分布に伴って変わることが明らかとなった。具体的には、遅れ時間が0.5秒から2.0秒の間で変動する条件と、2.0秒から3.5秒の間で変動する条件において、変化する散瞳の大きさはそのブロック内での相対的遅れ時間に応じて変化し、物理的な経過時間が等しい2.0秒ではなく、前者の2.0秒と後者の3.5秒というように、ブロック内で遅れ時間が最大となるときに最大の散瞳が生じ、その大きさもほぼ等しくなった。この結果は、我々が認知課題を遂行する際には、実験条件に応じて注意や期待を能動的かつ柔軟に調整していることを反映していると考えられる。 以上のように、瞬目と瞳孔反応のそれぞれについては認知処理との興味深い関係を見いだすことができている。瞬目と瞳孔反応の同時計測を活かすような知見を得ることが今後の課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度前半はコロナウィルス感染症の影響によりまったく実験を進めることができず、後半になっても、これまでのペースでは実験を進めることができなかった。特に、2020年度は、研究予算で研究員を雇用し、実験を効率的に進めることを計画していたが、コロナウィルス感染症の影響によりそれも難しくなってしまった。そうした厳しい状況であったが、これまでの実験データの解析を進めるとともに、一部の実験室実験を進めることによって、上記のような興味深い知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルス感染症の影響により研究がやや遅れてしまったが、研究期間の延長が承認されたため、2020年度に計画していた研究員の雇用を進め、研究を効率的に進める予定である。これまで、瞬目と瞳孔反応を同時計測しながら、測定手続きや解析方法の改善に努め、ソフトウェアの開発を進めてきた。今後は、瞬目と瞳孔反応それぞれの長所を活かした認知機能の評価手法の確立に向けて、知覚的競合事態を用いた新たな実験パラダイムにおいて検討を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
2020年度には研究予算で研究員を雇用し、実験を効率的進めることを計画していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により計画が頓挫してしまい、予算を次年度に繰り越すこととなった。この予算は、今年度、研究員の雇用に充てる予定である。
|