2021 Fiscal Year Research-status Report
言葉と情動スキルを伸ばす早期介入プログラムの検討:貧困の連鎖を断ち切るために
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18K18688
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松井 智子 中央大学, 文学部, 教授 (20296792)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 言語発達遅滞 / 経済格差 / 学力格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は探索的な研究として、「ポピュレーションアプローチ(大規模調査)」ではなく、より規模の小さい「ハイリスクアプローチ」に基づき、言語発達遅滞など、子のリスク要因が確認された2歳から3歳の子を持つハイリスク家庭を対象とした介入研究である。言葉の遅れを主訴として相談に訪れた、子のリスク要因がわかっている母子と、貧困、低学歴に加えて、文化的マイノリティであるため必要な支援を受けにくいなど親のリスク要因がわかっている国内の日系外国人家庭を対象とする。 令和3年度はハイリスク家庭の子どもの家庭での言語使用に関する質問紙調査を継続して実施した。先行研究では,ASD幼児が述部や機能語の表出が少ないことが報告されている。本研究では,ASD幼児(3~5才)を対象に,日本語版マッカーサー乳幼児言語発達質問紙(JCDI)とKIDS乳幼児発達スケールを用いた縦断的調査を行った。そして,表出語彙数(JCDI得点)の一年間の伸びと行動特徴(KIDS得点)の一年間の伸びの相関関係を調べたところ,年中から年長にかけて,述部に含まれる語や機能語(「動詞」「形容詞」「代名詞」「位置場所」「数量」「接続」「会話語」)の伸びは,年少から年中にかけての行動特徴「対大人社会性」の伸びと中程度の相関があることが分かった。このことから,子どもに対する大人の関わり方を変えていくことで,機能語の表出が伸び得る可能性のあることが分かった。 さらに日系外国人家庭の母子会話データの収集を開始し、書き起こしも進めた。その後、将来の学習言語の発達を促進するという脱文脈的発話の頻度に焦点を当てた分析を実施した。その結果、日本人母子の会話と比較して、日系外国人母子の会話には、脱文脈的発話の頻度が有意に低いことが明らかとなった。この結果を今後の母子支援に結びつける必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、ハイリスク家庭および比較対象群の新たな協力者の母子会話のデータを収集することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスの感染拡大が終息しだい、ハイリスク家庭の新たな協力者のデータを収集する。それまでの間は、これまで収集したデータの分析を多角的に行う。日系外国人の母子会話の分析には引き続き母語話者の研究協力を依頼する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍でハイリスク家庭と比較対象群の母子会話データを十分に収集することができなかったため、その収集と書き起こし、解析が次年度に残されている。また海外共同研究者との打ち合わせも海外渡航が難しかったために延期になっている。データ収集および書き起こし、解析に必要な研究補助者の謝金、海外渡航を次年度に計画している。
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