2018 Fiscal Year Research-status Report
主観的に見えている感覚の脳機序:脳波周波数解析による検討
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18K18690
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
坪見 博之 富山大学, 人文学部, 准教授 (70447986)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 実験心理学 / 感覚記憶 / 意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちの視覚は、注意と記憶の二つの段階で、一度に処理できる容量が極めて少数に限られる。それにも関わらず、「目の前のすべてが見える」と主観的に感じるのはなぜだろうか。従来の研究は容量制約を示すに留まっており、この問題を直接扱ってこなかった。そこで本研究では、解明への突破口を目指し、「主観的に見えている感覚」の成り立ちについて、脳機序も含めて直接検討する。「主観的に見えている感覚」の特徴は、物体が目の前にある時はすべてが見え、物体が消えると速やかに見えなくなったと感じることにある。この特徴は、これまで意識との関わりでは取り上げられなかった「感覚記憶(Sperling, 1960, Psychol Monogr)」が対応すると考えられる。そこで本研究では全体の計画として、感覚記憶について、(1)心理学実験による心的メカニズムの検討と、(2)脳波実験による神経科学的メカニズムの検討を進める。 今年度はまず、(1)心理学実験による心的メカニズムの検討を進めた。研究代表者らの過去の検討から、感覚記憶の持続時間は、従来考えられてきたよりも長く続く可能性が示されていたため(Tsubomi et al., 2017, VSS)、Sperling(1960)のオリジナルの実験と同じパラダイムを再現し、感覚記憶の基本的な性質について検討した。その結果、感覚記憶は従来想定されてきていた0.5秒よりも長い間、少なくとも2秒程度持続することを新たに見出した。これは、Sperling(1960)の研究において見逃されていた解析法に注目した結果であり、現在は、どのような性質が従来の結果との違いを示すに至ったのかについて、さらに検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、主観的に見えている感覚について心理学実験と脳波実験の2つのアプローチによって研究を進めている。初年度にそのうちの1つ目のアプローチについて、およそ40名の実験参加者からのデータを集め、実験を進めることができた。予定通りに心理学実験を進めることができており、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、概ね予測に従ったデータが得られつつあるが、論文にまとめ成果発表に至るまでには、より多くの参加者からデータを集めることが必要であり、本研究の主張以外の可能性を検討する追加実験も必要であるため、次年度も引き続き心理学実験を行いデータ収集を行う予定である。また、脳波実験についても予備的な実験を開始したい。
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Causes of Carryover |
本研究課題では、実験補助員を雇用するための人件費に多くを割り当てているが、今年度は別の方法で実験補助員を確保することができたので、支出が少なくなった。また、旅費に関しては、学会発表に使用する予定であったが、共同研究者らと相談した結果、より検討を進めてから発表する方がよいという意見でまとまったため、次年度の発表を考えている。次年度は実験補助員の雇用や学会発表等も進めていく予定であり、それらの支出に割り当てる予定である。
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