2019 Fiscal Year Research-status Report
エピソード記憶の特性と機能に関する複合的アプローチ:ノスタルジア・心理的幸福感
Project/Area Number |
18K18692
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 潤 名古屋大学, 情報学研究科, 特任教授 (70152931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正法 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (60723773)
鈴木 紘子 (中村紘子) 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 助教 (30521976)
大竹 恵子 関西学院大学, 文学部, 教授 (70405893)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | エピソード記憶 / なつかしさ / ノスタルジア / 幸福感 / 自伝的記憶 / 時間割引 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,エピソード記憶がもっている,過去の記憶を再体験するかのごとく想起する機能を,ノスタルジア感情というヒト特有と予想される感情機能との関連から,実験的手法によって明らかにしようとするものである. エピソード記憶はメンタルタイムトラベル(mental time travel)という用語に代表されるように,過去を再体験するかのごとく思い出すという想起意識(autonoetic conscioiusness)が重要であるが,なつかしさ(ノスタルジア)を強く有した場合に特にこの再体験感という特徴があらわれやすいと考えられる。 前年度実施したなつかしい記憶を想起することによる幸福感の向上について検討を進めたが,そこでは幸福感はsubject vaitality尺度を用いてきた。しかしこれは西洋的幸福感を反映しているとも考えられ,日本的幸福感尺度への影響を検討したが,大きな効果は得られなかった。幸福感測定手法について再検討を行っている。 また,なつかしい記憶想起による時間割引課題への影響について,論文化を進めた(現時点で進行中)。時間割引課題は未来の報酬と現在の報酬を比較する課題であり,詳細なエピソード記憶想起と関連することが最近報告されている。詳細な記憶想起をともなうなつかしい記憶想起が時間割引率が低下するかという問題についての検討である。 さらに,これまでなつかしさ喚起は,event reflection taskというなつかしい記憶を想起し自由記述する課題を用いてきた。ただし,その自由記述内容の分析は行ってこなかった。近年のエピソード記憶研究でしばしば用いられているAI(autobiographical interview; Levine, et al., 2002)を用いて分析するために,自由記述内容の自動分析法を機械学習を用いて進められるかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
なつかしい記憶の想起と時間割引課題の関連に関する論文化を進めるとともに,自由記述内容の自動分析法を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスによる自粛のため,長時間かかる個別実験の実施は困難な可能性が高い。そのため,これまで得られた知見をまとめる作業を進めるとともに,分析対象としてこなかった記憶想起に関わる言語記述データの分析を進める。web実験が可能であれば,ノスタルジア想起と幸福感に関わる新たなデータを得ることを試みる。研究のまとめとして,エピソード記憶研究の最近の理論を元に,現時点で明らかとなったノスタルジア想起のメカニズム,機能,幸福感との関連をまとめる作業を進める。
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Causes of Carryover |
なつかしい記憶想起喚起の自由記述データについて,機械学習を用いて新たに分析する必要が生じ,その費用として用いる予定である。
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Research Products
(12 results)