2021 Fiscal Year Research-status Report
エピソード記憶の特性と機能に関する複合的アプローチ:ノスタルジア・心理的幸福感
Project/Area Number |
18K18692
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
川口 潤 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (70152931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正法 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (60723773)
鈴木 紘子 (中村紘子) 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 助教 (30521976)
大竹 恵子 関西学院大学, 文学部, 教授 (70405893)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | エピソード記憶 / なつかしさ / ノスタルジア / 幸福感 / 自伝的記憶 / 詳細さ / 時間割引 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,エピソード記憶がもっている,過去の記憶を再体験するかのごとく想起する機能を,ノスタルジア(なつかしさ)感情というヒト特有と予想される感情機能との関連から,実験的手法によって明らかにしようとするものである. エピソード記憶における過去を再体験するかのごとく思い出す状態はautonoetic conscioiusness,あるいはメンタルタイムトラベル(mental time travel)と呼ばれるが,なつかしさを強く有した記憶想起では特にこの再体験感という特徴があらわれやすいことから,なつかしさ想起をエピソード記憶の機能解明の重要な手段と位置づけて研究を進めている。 時間割引課題を用いた研究では実験室実験を行う予定であったが,本年度もコロナ禍における実験実施が困難となり,Web実験の手法を検討した。ただ,web実験ではなつかしさ喚起が十分行われない可能性が極めて高く,さらなる方法の検討を行た。2022年5月現在で新型コロナによる感染状況がおさまりつつあるため,研究期間を延長し個別実験の可能性を探る予定である。 また,エピソード記憶想起の特徴である再体験感は想起の詳細さと関連していると考えられることから,なつかしさ喚起研究で用いてきたevent reflection taskという,なつかしい記憶を想起し自由記述する課題で得られた内容の詳細さを,自然言語処理における機械学習の手法を用いて分析することを検討した。現在,具体的な学習データの確保段階である。 さらに,エピソード記憶の詳細な想起が創造性やwell-beingにつながる可能性が考えられ,そられの研究をまとめているところである。また,なつかしさ研究の論文集の編集に携わった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により実験室実験の実施が困難であり,予定より遅れている。すでにあるデータを元に,なつかしい記憶の想起と時間割引課題の関連に関する論文化,およびに,なつかしい記憶想起における自由記述内容の分析を早急に進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスによる自粛のため,昨年度は個別実験の実施ができなかったが,2022年5月現在で緊急事態宣言は行われておらず,大学での授業も対面授業が始まっていることから,個別実験の実施を行うとともに,記憶想起に関わる言語記述データの分析をさらに進める。研究のまとめとして,エピソード記憶研究の最近の理論を元に,現時点で明らかとなったノスタルジア想起のメカニズム,機能,幸福感との関連をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍により実験の実施が困難であったため,コロナ禍の収束にともない実施予定のなつかしい記憶・エピソード記憶想起実験,および自由記述データの学習によるデータ分析に必要な費用として用いる予定である。
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