2019 Fiscal Year Research-status Report
Changes in emotional state while holding a slimy liquid
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18K18695
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中西 義孝 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90304740)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 粘性流体 / ニュートン流体 / 非ニュートン流体 / 皮膚 / こころ / 生理学的指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
“ぬるぬる”とした粘性液体が身体と接触する場合がある。粘性液体の特性により異なるが、皮膚の摩擦制御であったり、皮膚の洗浄や保湿などさまざまである。粘性液体を介して物理的な刺激が与えられれば、ヒトのこころにも様々な変化が現れる。 本年度の研究では、粘性流体をニュートン流体と非ニュートン流体に区分し、それぞれの粘性流体が手のひらに触れたときのヒトのこころの変化と生理学的指標(自律神経活動変化)を調べた。ニュートン流体とは粘性流体のせん断速度に依存せず、ほぼ同じ粘度を示すものであり、ポリビニルアルコール水溶液にて調整した。非ニュートン流体にはせん断速度の増加にともない粘度が低下するものを選んだ。この粘性特性は自然界や生命体で多用されている特性であり、ポリエチレングリコール水溶液にて調整した。 ニュートン流体を手のひらに触れさせたとき、受け取った感覚は被験者により様々で、中には驚いたり、満足したり、という感情を抱く被験者がいた。このときの自律神経活動のうち、交感神経活動は被験者によりバラバラであったが、副交感神経の活動は抑制される傾向が観察された。非ニュートン流体を手のひらに触れさせたとき、受け取った感覚はおもに不快・憂鬱などに集中する条件があった。このときの交感神経の活動変化は被験者によりバラバラであったが、副交感神経の活動は増加する傾向にあった。 これらの研究活動から多数の分岐研究が発足した。一つは、粘性流体の調整過程において、非常に高粘度のゲル状物質の作成ノウハウを得ることができた。この成果を機械部品への活用・検証実験に移行させた。粘性流体を手に添えて動作するパターンの把握と分析が必要である可能性があるため、上肢の非侵襲動態解析を実施することが出来た。さらに、触感を知るための試みとしてガラス面の微細加工とヒト皮膚との接触問題を国際共同研究に進展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘性流体が手のひらに付着した場合の試験からえられるものが多く、その結果、本年度の計画であった “視覚”がプラスされた状態の影響、ならびに皮膚の対象部位を手のひらから足へ拡大する計画については、十分すすめることはできなかった。 しかし、ヒトのこころとニュートン流体または非ニュートン流体の関係について、非常に分かりやすい結果が得られた。ニュートン流体を手のひらに触れさせたとき、ヒトのこころは被験者により様々で、不快に感じたり、驚いたり、満足したり、というバラバラな感情を抱かせる可能性が示唆された。このとき副交感神経の活動が抑制される傾向が観察されている。非ニュートン流体を手のひらに触れさせたときは、ヒトのこころは不快な感情を抱かせる方向に偏って現れる。しかし、副交感神経の活動が増加する傾向にあることから、さらなる関連性調査の必要性が表れた。ヒト皮膚に接触させる製品を調整するとき、粘度の調整のしやすさやわかりやすさからニュートン流体を使うことが多いと推測される。しかし、今年度の結果は自然界や生命体で多用されている粘性特性を利用すると、ヒトによってばらつきが少ない、一定の効果が現れやすいことを示していた。 粘性流体とヒトのこころの関係に関する本研究活動から多数の分岐研究が発足し、なかには非常に実用的な対象へと発展したものがあった。一つは、粘性流体の調整過程において、非常に高粘度のゲル状物質の作成ノウハウを得ることができたことであり、この成果を機械部品への活用・検証実験に移行させた。粘性流体を手に添えて動作するパターンの把握と分析が必要である可能性があるため、上肢の非侵襲動態解析を実施することが出来た。さらに、触感を知るための試みとしてガラス面の微細加工とヒト皮膚との接触問題を国際共同研究に進展させた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実施してきた粘性流体のパラメータ(ニュートン流体/非ニュートン流体、粘度、温度)に“視覚”がプラスされた状態の影響を調査する。調査には着色した各粘性流体を利用する。また、皮膚の対象部位を手のひらから足へ拡大する。さらには視覚に特化した、すなわち皮膚感覚を除外した研究も実施する。例えば、各流体の吐出口または付着面(の映像)を変化させた影響についても調査する。 各種の粘性流体を工学的に的確に分類・表現できる方法をさらに探求し、粘性流体の表現・分類パラメータの明確化に努める。この粘性液体により触覚(手・ 足)または視覚から刺激されたときのヒトのこころを生理学的指標にて測定し、SD(Semantic Differential Method)法との相関をとることで、ヒトの暮らしの質を向上させるプロダクトやコンテンツを提案できるようにする。 この触覚を通じた刺激に関する試験は皮膚/粘性流体/皮膚の滑りで実施していた。国際共同研究として発足している製品と皮膚の触れ合いについても検証を実施する。具体的には同じガラス素材でも表面をマイクロレベルで微細加工することにより、濡れ性などの特性が変化することを実験的に確認しており、ヒト手指との摩擦係数を微視的な接触状態を観察しながら測定する。また、非常に高粘度のゲル状物質の作成ノウハウを得ることから派生した機械部品への活用・検証実験の継続、ならびに上肢の非侵襲動態解析についても引き続き研究を実施し、包括的な皮膚とヒトのこころについての検証に役立てて行く。
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Research Products
(15 results)