2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18696
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
村山 航 高知工科大学, 総合研究所, 客員教授 (10748726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
繁桝 博昭 高知工科大学, 情報学群, 教授 (90447855)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | メタ動機づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は,人は比較的退屈な課題に対して,動機づけを過小評価する,つまり実際よりも課題が面白くないと予測することが発見された。今年度は,この研究をさらに発展するため,2つのタイプの研究を行った。
1つは,こうした動機づけの過小評価のメカニズムを調べる実験である。ここでは「動機づけの過小評価は,人は課題に対する習熟を動機づけを予測するときに考慮しないために生じる」という仮説を立て,その妥当性を検討した。仮説を支持する形で,評定課題を用いた実験では,動機づけの過小評価が生じなかった。これは,評定課題には習熟という要素が存在しないからだと説明することができる。その一方で,習熟が生じるような課題(たとえばドットの数を短い時間で数える課題)でも,動機づけの過小評価が生じなかったり,むしろ動機づけの過大評価が生じるなら,むしろ昨年度の知見に相反する実験結果もいくつか観察された。これは,習熟による仮説を支持しない結果である。したがって,動機づけの過小評価,もしくは今回新たに発見された動機づけの過大評価が生じるための課題の特徴を,統一的に説明できるような理論が必要になると考えられる。
もう1つのタイプの研究では,親子の評定の調査データを用いて,親が子どもの動機づけ状態をどのように評価するのかを検討した。その結果,親は子どもの動機づけ状態を比較的正確に認知していることが明らかになった。これは縦断のデータを用いて,因果の方向を調べる分析でも,子どもの動機づけ状態が,親の子認知を予測することが示された。その一方で,親が「この子はこういった動機づけ状態だ」と考えると,その子どもの将来的な動機づけ状態がそれに沿った形で変化するという,予測にはなかったが面白い現象も発見された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り,もしくは予定以上の実験や調査を実施できているという意味では,順調に進んでいると考えられる。その一方で,仮説とは違う結果が出たり,予測していなかった面白い知見が発見されるなど,必ずしも当初の仮説が支持されなかったという意味では,やるべき課題を多く残しているともいえる。ただし,こうした試行錯誤は,探索的な萌芽研究の特徴であるともいえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験で,結果が今までの研究と一貫しなかった理由を引き続き探索的に検討する予定である。また,調査研究で得られた「親が子どもの動機づけを認知した形に子どもの動機づけが変容する」という予言の自己成就ともいうべき現象のメカニズムに関しても,調査研究を通して調べる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度も多くの行動実験を実施したが,予測とは異なる結果がいくつも出たため,計画を変更しながら,実験のスピードを遅らせて実施したため,使用額を使い切らなかった。次年度には数多くの実験を計画し,今年度に実施しきれなかった実験も行う予定である。
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