2018 Fiscal Year Research-status Report
視覚情報による人違い現象の解明:人違いの心理学の創生に向けて
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18K18699
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊東 裕司 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70151545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 大志 杏林大学, 保健学部, 講師 (80726084)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 人物誤同定 / 認知的失敗 / 人違い / 既知人物 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚的に接触した人物を別の基地人物として誤同定する人違い現象の解明に向け、二つの実験的研究を行なった。一つはコンピュータ画面の中央に提示される数字を読み上げる課題を遂行中にその周りにつぎつぎとランダムに提示される顔写真から有名人の顔を探す課題である。この実験では、既知感の上昇が人違いを誘発するという仮説を検討した。提示される顔は大部分が未知人物であるが、その半数はあらかじめ閾下で参加者に提示(プライミング)されていた。未知人物を見て有名人として反応した場合を人違いとしたが、人違い反応はプライミングの有無にかかわらず生起し、プライミングの有無によって生起率に違いはなかった。仮説は支持されなかったが、閾下提示の条件を変更して再度実験を行う必要がある。 フィールド実験では、自然な状況下で実際の人物を見たときに人違いを生起させる方法を考案し、人違いを促進する条件の解明を目指した。実験参加者は、教室で短時間話をしたゲストスピーカーとキャンパス内で待ち合わせをしたが、待ち合わせの場所では同じ服を着た別の人物、あるいは全く異なる服を着ているが容貌が似ている別の人物のいずれかが待っていた。一定時間、参加者から待っていた人物に声をかけるのを待ち、その後待っていた人物をどう思ったかなどの質問に回答を求めた。66名の実験参加者のうち18名が待っていた人物を待ち合わせをした人物と誤って声をかけたほか、声をかけなかった参加者も多くが少なくとも一瞬は待ち合わせた人物だと思ったと報告した。ただし、服が同じ条件と容貌が似ている条件の間に差は見られなかった。この実験については現在分析の途中であるが、人違いの生起には服装や容貌の類似よりも、特定の人物が待っているという期待や状況が人違いを引き起こしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験室実験を行い、方法論上の問題点を明らかにした。これにより、次に行う実験の方向性が示された。また、2年目に予定していたフィールド実験を実施し、人違いを引き起こせることを確認することができた。一方調査研究については準備に時間がかかり、実査を行うまでには至らなかった。予定以上に進んだところと、予定より遅れているところがあるが、全体としては概ね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
実験室的な研究に関しては、親近性が人違いを引き起こすという仮説の検討に関して、閾下提示の条件を調整するという課題が明らかになったので、これを調整して実験を実施する。また、顔刺激以外の全身像、シルエットなどを使った実験も計画する。フィールド実験については、よりよく知っている既知人物に間違える設定を工夫したい。遅れている調査研究については、日誌法と面接法を組み合わせた調査の実施に向けて、サンプル、調査担当者の確保、質問項目の整備などを急ぎ進め、なるべく早い時期に小規模なサンプルで実施し、問題点を洗い出すなどした上で、2019年度中に大きなサンプルに拡張しての実施を目指したい。 また2019年度には、論文の投稿を行う他、関連する領域の研究者とシンポジウムを行うなど、研究成果の発信、および人違い研究を心理学の研究テーマとして学界内で認知させるための活動にも力を入れたい。
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Causes of Carryover |
実験参加者に対する謝金をほとんど使わずに実験を行うことができたこと、調査研究が実査を行うまでに至らなかったことが大きな原因である。実験については、今後多くに参加者に謝金を支払うことが可能になったので、参加者数を増やして実験を計画する予定である。また調査に関しては、これまでに実施ができなかった調査を行うので、費用は必要となる。さらに問題点を検討した上で、本来2019年度に予定していた調査を行うことになるので、合わせて経費が必要になる。 また、シンポジウムなどの実施も考えているため、そのための経費も支出する予定である。
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Research Products
(3 results)