2022 Fiscal Year Research-status Report
総合的な社会的信頼研究の展開 -ディペンダビリティ心理学創出の挑戦-
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18K18704
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
林 直保子 関西大学, 社会学部, 教授 (00302654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
与謝野 有紀 関西大学, 社会学部, 教授 (00230673)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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Keywords | 信頼 / 信頼性 / 潜在連合テスト / 社会関係資本 / ブランド / ブランディング / 地域文化意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、以下を実施した。 1)2021年度に行った「大阪府下の信頼感と文化意識に関する調査」の基礎的なデータ解析を行った後、自己組織化マップという分析手法を適用し、回答パターンを解明した。この解析結果について、論文を投稿した。 2)また、IAT (Implicit Association Test,以下IAT)と呼ばれる潜在的態度測定法を、音声を用いた測定方法に拡張し、その測定方法を用いた潜在的態度指標の信頼性と妥当性を検討する実験を行った。IATは、単語のグループ分け課題における概念同士の組み合わせの違いで生じる反応時間の差から、概念間の連合強度を測定する手法であり、通常、コンピュータプログラムによるものと紙筆式の2種類が用いられる。コンピュータ版のIATは、実施や集計が容易であるというメリットがあるが、大人数を同時に実施するためには相応のPC設備が必要となる。一方、紙筆式の場合、PC設備は不要であるが、回答者にかかる作業時間の速度の測定が難しいという問題がある。そこで、本課題では、音声教示により、回答作業の進行を調査者がコントロールしながら、PC設備を用いることなくIATを実施する音声IATを開発した。具体的には、96名の実験参加者に対し、音声教示によるIAT、コンピュータ版IAT、紙筆式IAT、質問紙による顕在的態度指標の4種類を測定した。このことにより、音声IATによる信頼の測定が可能となり、「協力の他人指向性原理」の実証的研究の準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は概ね順調に研究を推進することができたが、前期には一部新型コロナウイルス変異株の影響が残っており、2020年から2021年度までの大幅な研究の遅延を完全に回復するには至らず、研究の最終段階については2023年度に積み残す事態となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は最終年度となる。2023年度は以下を実施する。
1)2022年度に約100人を対象に行った実験から得られた、PC型IAT、紙筆式IAT、音声型I AT、SD法による顕在指標の間の関連性について、信頼感の測定の形で再現性を確認する。特に、紙筆式IAT、音声型IAT、SD法による顕在指標の間の関係に着目して検討を行う。2)前述1は、実証的測定の問題であるが、顕在指標とIATの間の相関が、2022年度の別項目での測定の場合と同様に「強い相関関係があるとは言えない」と想定されるが、この場合、それぞれは何を測っており、また、どちらの信頼感が測定としてより適切かについて理論的検討をおこなう必要がある。この理論的検討を、妥当性、信頼性の基本的特性から行う。3)既存研究では、IATで測定した意識項目の方が行動指標との相関が高いことが指摘されている。信頼感においては、委任分配ゲームおよびPDゲームが信頼に関する行動指標を提供するため、これらの指標、SD法による顕在指標、およびIAT測定結果の間で相関関係を検討する。4)3の結果から、SD法による顕在指標とIAT測定結果が行動指標との相関の状況にかんがみ、これまでの一般的信頼尺度などをもちいた信頼の測定、およびこれらの測定を基礎として構築された理論について、根本的な再検討を行う。5)認知的連合の理論的視座から、信頼感の生成に関する新規理論構築を行う。6)プランディングが信頼感生成の一形態であるとの認識から、前述5までの研究結果を踏まえて、購買意思決定行動に関する予測をおこない、インターネット調査データなどを用いて実証する。7)前述について、邦文、欧文論文を執筆し、研究成果を世に公表する。
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Causes of Carryover |
2020年度前半から2022年前半までの間、COVID-19の蔓延の影響により、想定していたような実験が実施できず、インターネット調査などで補ってきたが、当初予定まで至ることができなかった。一方、2022年度後半に至って、学生をもちいた実験を実施できる環境に変化したため、一定数の実験を行うことができ、2023年度まで研究を継続することで当初予定の成果を獲得できる見込みがついた。このため、次年度使用が生じることとなった。 2023年度については、実験、インターネット調査の実証研究の実施を中心とし、それと並行しながら、信頼感構築の認知的連合形成の視点からの新理論構築を行う。
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