2019 Fiscal Year Research-status Report
Arithmetic of values at real quadratics of the j-function
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18K18712
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金子 昌信 九州大学, 数理学研究院, 教授 (70202017)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 楕円モジュラー j-関数 / 実二次無理数 / 類数 / Kronecker 極限公式 / データ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある型の虚2次体の類数を,しかるべき意味で対応している実2次無理数の連分数展開の周期に現れる数を見ることによって計算出来る,という,Hirzebruch-Zagierによる美しい定理が半世紀近く前から知られている. 徳島大の水野義紀と共同で,その一般化について研究してきており,今年度もそれについての講演を行ったが,その論文が Journal of London Mathematical Societyに受理された.実2次体のKronecker極限公式の,全整数環とは限らない整環への一般化を与えており,本研究課題の遂行に大きな役割を果たしうる研究と思われる.様々な応用についてもなお研究が進行中である. 前年度の,スイスの Ozlem Imamoglu およびその元学生,共同研究者より,本研究課題に関してかつて私が実験的に観察し予想した事実(Kyushu Journal of Mathematics, 2009)のいくつかを証明したとする論文を,彼らが用いていた負の連分数展開によらず,通常の連分数展開を用いて定式化し,一般化することについては,本年度 Don Zagier 氏とも議論をし,さらなる進展をさせるべく研究を続けている. また立谷洋平氏,Carsten Elsner 氏と共同で行った古典的なテータ関数の値の代数独立性,超越性に関する研究論文はJournal of Ramanujan Mathematical Societyに掲載が決まった.ここでの手法を応用して,楕円モジュラー関数の実2次点での値の超越性にも何か道が開けないものか,引き続き研究を進める. 津村博文氏と共同で行っている,レベル2の多重ゼータ値の研究は,多重ゼータ値のモジュラー現象とも呼ばれる,モジュラー形式との結びつきが期待されるところであったが,現在までの所それは見つかっていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の最大の研究目的であった,2009年に提出した予想を進展させることについては,他の研究者の結果や,私の元学生や国内の若手研究者による進展はあるものの,前年度期待したほどには進展しておらず,論文の形にするには至っていない.水野との研究は大きな成果であるが,今年度の進展は,水野による.しかも類体構成という面ではまだまだ道のりが遠い感がある.多重ゼータ値の研究は,モジュラー形式が絡んでくると,本研究と間接的には関連することになるが,その糸口を見つけることは出来なかった.今年度の研究成果が本研究の進捗にどれだけ寄与しているかを考えると,やや遅れていると言わざるを得ない.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,モックモジュラー形式,調和マース形式などの関連研究を調べながら,2009年に予想を提出して以来この方面で進展してきた研究成果を取り入れつつ,j-関数の実二次点での値について研究を進める.代数的な量を取り出すこと,すなわち類体構成につながるような研究については依然として明確なアイデアはない.しかし再び Don Zagier 氏を訪ねて議論を行い,新しい方向性を探っていく.水野義紀との共同研究もさらに発展させるべく議論を継続する.Hirzebruch 和と類数の関係は,表層的な面白さを超えて,奥により深い構造的なものがあるのではないかと期待するので,今一度これまでの古典的な成果を見直すことも一つの方策である.その他,立谷洋平らとの超越性に関する研究にヒントを求めていくことも継続する.
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Causes of Carryover |
本研究課題とも関係の深い,アンブラル・ムーンシャインの研究で知られるJohn Duncan氏と,頂点作用素代数や保型微分方程式を研究する永友清和氏を,それぞれアメリカ,大阪から招聘し,ポスドクらと共に共同研究,議論を行う予定であった.しかるに永友氏が不慮の事故で,その遂行が不可能になり,予定を変更せざるを得なくなった.Duncan 氏は別途九州大学樋上和宏氏の招聘で来福されたため,その分の経費を次年度に回し,Ken Ono 氏または Zagier 氏を招聘してモックモジュラー形式の講演を行ってもらい,議論を深める予定である.
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Research Products
(3 results)