2020 Fiscal Year Research-status Report
Evolution equations with the coexistence of fractional derivatives and nonlinear structures
Project/Area Number |
18K18715
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
赤木 剛朗 東北大学, 理学研究科, 教授 (60360202)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
Keywords | 非整数階微分 / 非線形問題 / 発展方程式 / 異常拡散 / 多重スケール |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に生じた追加課題について取り組んだ。まず非凸のエネルギー汎関数を持つ fractional gradient flow の構成に取り組んだ。これはλ-凸なエネルギーに対してはすでに昨年度発表した論文(Israel J. Math. 誌)の一般論でカバーされているが、ここでは劣線形な非単調項や爆発項を含む偏微分方程式も視野に入れた理論の構築に取り組んだ。その結果、プロトタイプとなる存在定理が証明できている。より多様な偏微分方程式をカバーするため、また古典的な勾配流理論との類推から生じているギャップを埋めるため、引き続き、理論の改良に取り組む。解の漸近挙動(特に定常解への収束)に関しては Lojasiewicz の不等式を用いるアプローチについて検討を進め、制限的な設定の下だが、定常解への全列収束が証明された。制限をはずすため引き続き改良に取り組む。さらに多孔質媒体方程式や fast diffusion 方程式をよりフレキシブルに扱うために、二重非線形型の fractional gradient flow の構成に取り組んだ。これらの方程式はディリクレ境界条件などに限定すれば、昨年度論文発表した一般論でも扱うことができたが、ここではより多様な境界条件、さらには p-Laplace 型の方程式との合併型の問題(二重非線形放物型方程式)を扱うためには必要な拡張である。これに対してもプロトタイプの導出に一定の見通しを立てたが、重要な方程式を扱うためには外すべき仮定があるため、引き続き、理論の改良に取り組む。その他、Meyers型評価の分数べきラプラス作用素への拡張について取り組んだ。当初、関数空間の包含関係に関してうまく行かない点があったが、ごく最近、H. Brezis 氏が導入した関数空間を用いることで解決する見通しがついている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予定されていた研究計画は概ね完了している。一方、研究期間中に生じた追加課題に関しては途中である。また新型コロナの影響で海外出張がまったくできなくなり、研究成果の発表や必要な意見交換や情報収集ができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は現在取り組んでいる研究の完結を目指す。特に非凸エネルギーに対する fractional gradient flow の構成を古典的な勾配流と同様の精度まで改良したい。非整数階微分からくる正則性の欠落と連鎖律の精度の低さが支障になっている。そのため、より精密な正則性理論の構築や連鎖律の精度向上(特に完全な等式の形)がキーになってくると思われる。また解の漸近挙動(定常解への全列収束)に関しても、古典的な勾配流と同じように完全な無限次元の形での結果は見当たらない。こちらは非整数階微分と Lojasiewicz-Simon 型の勾配不等式を用いた議論の組み合わせを調整する必要がある。また解の収束性を定量的に評価するために Monge-Kantrovich 距離に基づく勾配流の理論を用いた、いわゆるエントロピー法がよく研究されているが、その fractional gradient flow 版はあまり知られていない。よって今後は非整数階微分を含む非線形発展方程式に対するエントロピー法の構築も検討したい。二重非線形型の問題は連鎖律の精度不足が致命的な問題となっている。この連鎖律はエネルギー評価の導出には十分だが弱極限の特定の段階で誤差項を生じさせてしまい、議論が閉じない。今後は一旦連鎖律を用いる方法を迂回して、別の方法で弱極限の特定ができないか試してみる。分数べきラプラス作用素に対するMeyers型不等式については、Brezis氏の研究結果を精査して、その理論を適用し、問題点の解決を目指したい。これらの研究には Stefanelli 氏(ウィーン大)、Schimperna氏(パヴィア大)の協力を仰ぐ他、指導大学院生と協働する形で進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナの影響で国内および国外出張が全くできなかったこと、また海外からの研究者招聘ができなかったことが次年度使用額が生じた理由である。次年度の使用計画としては、新型コロナが落ち着いた段階で国内・国外への出張を再開する。具体的には9月に千葉大学で開催される日本数学会、10月に京都大学数理解析研究所で開催される発展方程式関係のワークショップへの参加、来年3月に開催される日本数学会への参加や、イタリア・パヴィア大学、およびオーストリア・ウィーン大学に於ける研究打ち合わせを予定する。仮に新型コロナの影響で出張が引き続きできない場合は、オンラインで研究打ち合わせが十分できるように機材等の調達、オンラインでのウェビナーの講演謝金、その他、学生アルバイトの雇用に予算を使用することで、代替とする。
|
Research Products
(6 results)