2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of Laplacians on fractals invariant under action of discrete groups of Moebius transformations
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18K18720
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶野 直孝 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (90700352)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | ラプラシアン / フラクタル / Klein群の極限集合 / Sierpinski carpet / 自己等角フラクタル曲線 / Klein群の擬等角変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の前提であるApollonian gasket上のラプラシアンに関する結果,および2018年度中に得られていたKlein群(Riemann球面上のメビウス変換のなす離散群)の作用で不変かつSierpinski carpetと同相な円詰込フラクタルにおけるラプラシアンに関する結果についての概説論文を,The Proceedings of the 12th MSJ-SI ``Stochastic Analysis, Random Fields and Integrable Probability''(Advanced Studies in Pure Mathematicsシリーズの1冊として発刊)より出版した.しかし2021年度は本研究課題以外の職務や研究により多くの時間を費やすことを余儀なくされ,当該結果の詳細を記した論文の完成は叶わなかった. またKlein群の作用で不変かつSierpinski carpetと同相だが円詰込でないフラクタル(の扱い易い具体例)における,2020年度中の研究で定義することが可能であることの確認がほぼ完了していた幾何的に自然と思われるラプラシアンの候補について,Weyl型固有値漸近挙動を証明するためにNash不等式やcutoff Sobolev不等式などの基本的な関数不等式が示せないかの検討を継続した.しかしラプラシアンの定義可能性のより明解な証明は得られたものの,それ以外は本質的な進展は果たせなかった. その他,2021年度後半にはSierpinski carpetと同相なフラクタルを双曲群論や2次元擬等角幾何との関連で活発に研究している各国の専門家らを招聘あるいは訪問し議論を行うことを計画していたが,新型コロナウィルス感染症の蔓延による渡航制限のため2022年度への延期を余儀なくされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度の時点で既に解決の見通しが立っていた等角写像の有限族の作用で不変な単純フラクタル曲線における幾何的に自然なラプラシアンの構成と解析については,Weyl型固有値漸近挙動の証明が完成間近であったにも拘らず2021年度は他の職務・研究の都合によりこれを完成させることができなかった.この話題は解決困難であろうと本研究課題の応募時点で見込んでいたものであるとはいえ,完成を目前にして長期間足踏みしてしまっている現状は遅れていると評せざるを得ない. Klein群の作用で不変かつSierpinski carpetと同相だが円詰込でないフラクタル(の扱い易い具体例)については,上記の単純フラクタル曲線に対する結果を前提とした課題である上,Nash不等式やcutoff Sobolev不等式などの基本的な関数不等式の証明には多大な困難が伴うことも2020年度当初より予測していたので,2021年度にかけて検討を継続してなお進展の見通しがまだ立てられていないことは止むを得ないと思われる. 一方,2019年度末までに得られた結果およびその前提となる結果に関する論文の執筆については,概説論文1編の出版は果たしたものの時間の不足のため詳細な証明を記した論文の完成には依然として至っておらず,最も基本的な場合であるApollonian gasketの場合でさえ論文の完成にはもうしばらく時間を要するという状況である. 以上から,検討中の課題の困難さに鑑みると仕方がない部分もあるものの,研究課題全体としては2021年度末時点での進捗状況は2020年度中に見込んでいた水準より遅れていると評価せざるを得ない.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は2021年度には他の職務・研究の都合による時間不足を原因として停滞を余儀なくされたため,今後の研究の推進方策は基本的には2021年度当初に想定していたものを踏襲する. 具体的には,まず等角写像の有限族の作用で不変な単純フラクタル曲線における幾何的に自然なラプラシアンの構成と解析について,既に見通しが完全に立っているWeyl型固有値漸近挙動の証明を速やかに完成させる.さらにこの場合に対する知見を土台として,Klein群の作用で不変かつSierpinski carpetと同相だが円詰込でないフラクタル(の扱い易い具体例)に対してもNash不等式やcutoff Sobolev不等式などの基本的な関数不等式の証明を試み,ひいてはWeyl型固有値漸近挙動を示すことを目指す. 一方,上記と並行して円詰込フラクタルにおける研究についても,前提となるApollonian gasketに対する結果およびSierpinski carpetと同相な円詰込フラクタルに対する結果に関する論文の執筆を急ぐ. さらに以上の研究に関し国内外の研究集会で研究発表を行い,結果の周知に努めるとともに関連分野の専門家らの知見を乞う.また2022年度後半にはSierpinski carpetと同相なフラクタルを双曲群論や2次元擬等角幾何との関連で活発に研究している各国の専門家らを招聘あるいは訪問し議論を行う.これらは過去2年間に渡り新型コロナウィルス感染症の蔓延による渡航制限のため果たすことができなかったが,渡航制限が緩和されつつある2022年度こそは関連分野の今後の研究発展のための礎として何としてもこれらを実現したいと考えている.
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Causes of Carryover |
2021年度には研究集会への参加および研究打合せのため国内出張を行うことを検討はしたものの,新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴いそれらを全て取り止めることを余儀なくされたことから出張旅費を使用しないこととなった. 加えて2021年度末には比較的規模の大きい国際研究集会の日本国内での開催を計画しており,それに伴い多数の国内研究者および外国人研究者を招聘するための多額の招聘旅費が必要になるものと見込んでいたところ,やはり新型コロナウィルス感染症の感染拡大により当該研究集会の開催も2022年度に延期せざるを得なくなり,これに合わせて招聘旅費も2022年度に持ち越すことが適切という状況になった. 以上のことから2021年度は旅費所要額が皆無となった. 次年度使用額は,国内外の研究集会で研究発表を行い結果の周知に努めるとともに関連分野の専門家らの知見を乞うための旅費,各国の専門家らを招聘あるいは訪問し議論を行うための旅費,および上記国際研究集会の開催に当たり多数の国内研究者および外国人研究者を招聘するための招聘旅費として使用する.
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