2023 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of Laplacians on fractals invariant under action of discrete groups of Moebius transformations
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18K18720
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶野 直孝 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (90700352)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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Keywords | ラプラシアン / フラクタル / 自己等角フラクタル曲線 / 複素力学系のJulia集合 / Klein群の極限集合 / Sierpinski carpet / Weyl型固有値漸近挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,2019年度末の時点で既に解決の見通しが立っていた等角写像の有限族の作用で不変な単純フラクタル曲線における幾何的に自然なラプラシアンの構成と解析について研究を行い,等角写像の有限族の微分の非自明性に関するある緩やかな条件の下で幾何的に自然な形のWeyl型固有値漸近挙動の証明を完成させた. さらに等角写像の有限族が向きを保つメビウス変換だけからなるときには微分の非自明性に関する条件が満たされること,特に単純フラクタル曲線が純双曲的な有限生成第一種擬Fuchs群の極限集合である場合にWeyl型固有値漸近挙動の結果が適用できることを証明した. 等角写像の有限族の作用で不変な単純フラクタル曲線としては他に複素力学系のJulia集合として現れるものが重要であり,その大半はやはり微分の非自明性に関する条件を満たしている(従ってWeyl型固有値漸近挙動の結果が適用できる)はずであるとの感触は得られたが,その証明にはJulia集合の幾何構造に関する非自明な考察が必要となることが見込まれ2023年度中には証明を完了するまでには至らなかった.現時点での直近の課題はこの点の証明を完了することである. 本研究課題の主題である幾何的に自然なラプラシアンの構成と解析は,本研究課題の開始時点では円詰込フラクタルの場合にしか見通しが立っておらずフラクタルが長さ無限大の曲線を含む場合にラプラシアンをどう定義するべきかは全く不明であったが,上記の単純フラクタル曲線に対する研究はこの点に本質的な進展をもたらすものと言える. 他方,2018年度までに得られていた,Apollonian gasket上のラプラシアンに関する結果およびKlein群の作用で不変かつSierpinski carpetと同相な円詰込フラクタルにおけるラプラシアンに関する結果については,その詳細を記した論文の完成は果たせなかった.
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