2018 Fiscal Year Research-status Report
High temperature atomic layer superconductivity realized with hydrogenation
Project/Area Number |
18K18732
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋山 了太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40633962)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 水素修飾 / SrTiO3 / ペロブスカイト / 鉄系超伝導 / 薄膜 / 2次元超伝導 / 原子層物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の狙いは、水素化したSrTiO3(STO)基板の上にFeSeなどの原子層超伝導体を積層し、水素原子が高いフォノン周波数を持つことを利用して原子層超伝導体の転移温度を上昇させようというものである。まずは要素技術としてSTO基板表面の水素修飾を行った。これはノンドープSTOに対してクラックした水素を照射すると、表面が水素修飾され絶縁基板であったSTOに伝導性が生じることを超高真空中4探針電気伝導測定によって見出した。また水素化による抵抗の低下は水素曝露量を増やすと増大し、やがて飽和する。この変化はSTOのバンドギャップ中に新たな準位が生じたことによると考えられ、さらにこの状態はバルクバンドのベンディングと共に動くことのないnon rigidな性質を持つことが分かった。さらにこれらの電気伝導は2次元性を示す事がわかり、空間電荷層を伝導していることが分かった。これらについて論文投稿中である(2019年5月現在)。本研究ではこれらを踏まえ、さらにこの上にFeSe薄膜を成長させて超伝導を発現させる。まずは水素化していないSTO基板上にFeSeを堆積した。FeSeはメタリックであることから低温においては抵抗は極めて小さくなった。そのため現有装置での抵抗の精密な観測が困難になったため、高分解能を有する測定系の立ち上げを行った。低抵抗の原因の一つにはドープSTO基板を用いたことが挙げられ、絶縁STO基板を用いて酸素欠陥を抑えつつFeSeを成膜することが必要と考えられる。FeSeについてはSTMにおける報告は多いが、電気伝導による超伝導観測は膜の均一性などから簡単では無いと考えられ、実際我々の経験でも再現性良く高品質な薄膜を作るには技術が必要であると考えている。なお、これらFeSe薄膜の電気伝導については日本物理学会において発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FeSe薄膜において超伝導を観測することはそれほど困難であるとは見込んでいなかったが、実際は電気伝導測定に耐える均一性の高い原子層FeSe薄膜を作製することは難しく、再現性良く高品質な膜を作る技術開発に時間がかかったため。STOの水素化技術については確立したので、これら要素技術の組み合わせで今後は研究スピードを上げて行っていきたい。またFe蒸着に関して予算の関係から自作の蒸着源を用いていたが、本研究費によって温度の精密制御が可能な蒸着源を購入できたので、これも用いて更に研究効率化を図りたい。そして、低温での抵抗が予想よりも低かったため、高分解能電気伝導システムの新たな構築を迫られたことも進捗の律速をもたらした。すでにそれは構築できたため、今後はそれを使用して良質なデータを系統的に観測していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
現段階では、STOの水素化、単結晶FeSe薄膜の作製、電気伝導測定はすでに行えているが、良質なFeSe原子層薄膜の作製、高分解能電気伝導測定について課題が残っている。Fe蒸着源についてはこれまでは自作だったため耐熱温度やレート調整が難しく、またSe蒸着源も適切な蒸気圧にするにあたり工夫が必要であったため、新たな蒸着源の導入によって効率化を図りたい。そして良質な試料が作製できるようになったら、水素化STO上へも成長を試み、作製した高分解能電気伝導測定システムを用いて実験を行う。超伝導が観測できれば、水素化の影響についてはすぐに評価できると考えている。また、Tcの膜厚依存性についてはまだ未解明な点が多いため、その検証を行い、更にそれに対する水素化の影響についても調べることができれば、まだ決着の着いていない超伝導に対して界面が果たす役割について解明できると期待している。
|
Causes of Carryover |
元来、初年度に集中的に研究環境を整備して研究を始める予定であったため、次年度の使用予定額は少なく申請していた。しかし、研究進捗の都合から次年度に繰り越して次年度を増額し、本当に必要な物品購入に当てることが望ましいと判断したため。次年度は、実験装置(真空ポンプ及びソースメーター)の購入と研究環境の整備に充てる予定である。
|
Research Products
(27 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Si(111)上の(Pb,Au)表面合金層の構造と伝導特性2019
Author(s)
遠山晴子, 中村友謙, 田中宏明, L. V. Bondarenko, A. Y. Tupchaya, D. V. Gruznev, 保原麗, 秋山了太, A.V. Zotov, A.A. Saranin, 長谷川修司
Organizer
2019年春季日本物理学会
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-