2018 Fiscal Year Research-status Report
Quantum entanglement phenomena in organic massless Dirac electron systems
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18K18739
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
田嶋 尚也 東邦大学, 理学部, 教授 (40316930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 豊 東邦大学, 理学部, 教授 (20172629)
森成 隆夫 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (70314284)
須田 理行 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (80585159)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 有機ディラック電子系 / 量子エンタングルメント / ランダウ準位準位交差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、a-(BEDT-TTF)2I3にキャリアを注入し、低温・磁場下においてゼーマン分裂とバレー分裂したランダウ準位の準位交差近傍に量子エンタングルメントを生成し、電気的・熱的性質から検出することを目的とする。以下が本年度の成果である。 ・田嶋(研究代表者):本研究では、プラスチックPEN基板を用いて接触帯電法で安定した正孔注入を行い、磁場を2次元面垂直方向から平行方向へ約60度傾けてランダウ準位の準位交差を起こすことに成功した。準位交差近傍は、単純な(ランダウ準位の)状態密度分裂・交差では説明できず、それぞれの準位が複雑に絡み合っていることを示唆する結果を得た。さらに、高磁場測定でスピンとバレー分裂が起きることを確認した。 ・西尾(分担者):質量ゼロのディラック電子系の熱的性質を明らかにするために、圧力下比熱、ゼーベック効果、ネルンスト効果測定システムを構築した。 ・須田(分担者):PEN基板の表面電荷の不均化を極力小さくしたデバイスを作製した。 ・森成(分担者):磁場下での層状のディラック電子系,有機導体a-(BEDT-TTF)2I3における量子エンタングルメント効果を調べるために、ランダウ準位構造を決定する必要がある。一方、最近の第一原理計算の結果から、この系におけるスピン-軌道相互作用効果の重要性が指摘されている。本研究では単位格子内におけるBEDT-TTF分子の方向を考慮して、スピン-軌道相互作用を特徴付けるベクトルを仮定し、ランダウ準位構造を調べた。その結果、単純な一体問題ではなく、隣接サイト間の相互作用から生じる交換項を取り入れた計算が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・田嶋(研究代表者): a-(BEDT-TTF)2I3にキャリアを注入し、低温・傾斜磁場下でスピンとバレー分裂を起こしたランダウ準位が準位交差を起こすことに成功し、量子エンタングルメントを検出する準備を整えた。 ・西尾(研究分担者):非常に困難であると思われていた、圧力下比熱測定方法を確立した。 ・須田(研究分担者):良質なPEN基板デバイスを作成した。 ・森成(研究分担者):ディラック電子系における量子エンタングルメントの理論構築を行い、測定対象物質であるa-(BEDT-TTF)2I3をモデルにした理論を展開した。
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Strategy for Future Research Activity |
・田嶋(研究代表者):2019年度は、実験結果を森成の理論を基に解析し、量子エンタングルメントを調べる。さらに、熱輸送測定からランダウ準位の準位交差を観測し、量子エンタングルメントの生成・検出を行う。 ・西尾(研究分担者):比熱測定からランダウ準位の準位交差近傍で起きるエンタングルメントエントロピーを調べる。 ・須田(研究分担者):昨年度に引き続き、PEN基板デバイスを作成する。 ・森成(研究分担者):隣接サイト間の相互作用から生じる交換項を取り入れたセルフコンシシテントな計算を実行し、有機導体a-(BEDT-TTF)2I3におけるランダウ準位構造を明らかにする。その結果をもとに、面間の磁気抵抗を計算し、実験との比較検討を行う。特に、傾斜した磁場を印加したときに生じるランダウ準位交差において、スピン-軌道相互作用がどのように量子エンタングルメントエントロピーに寄与するかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
理由:当初の研究計画では、温度コントローラを新設して、量子輸送現象を温度制御することを計画した。しかし、2K以上の温度域で量子効果は非常に小さいために、本研究では1K以下の温度域における測定に徹した。そのため、温度コントローラ購入予定の金額が次年度使用額として生じた。 使用計画:昨年度末に超伝導磁石用の電源が故障し、修理不可となった。本研究では、高磁場下で量子エンタングルメントを生成・検出するため、超伝導磁石用電源は必要である。そのため、前年度の残額を超伝導磁石用電源の新設に使用する。なお、新しい超伝導磁石用電源が納品されるまでの期間、代替製品を借用できるためこのことによる研究の遅れは無い。 2019年度の全予算を以下のように使用計画する。「田嶋(研究代表者):超伝導磁石用電源の新設、国内外研究発表旅費、打合せ旅費」、「西尾(分担者):国内研究発表旅費、打合せ旅費」、「須田(分担者):デバイス基板・材料、有機溶媒、打合せ旅費」、「森成(分担者):国内研究発表旅費、打合せ旅費」
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Research Products
(8 results)