2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18742
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
小林 敬道 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (20260028)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 衝撃波反射挙動 / 高圧縮性物質 / 衝撃波誘起ルミネッセンス |
Outline of Annual Research Achievements |
衝撃波により誘起される未知の発光現象(衝撃波誘起ルミネッセンス)は低密度粉末物質の衝撃圧縮状態から初めて観測された。粉末物質の密度を上げると発光は弱くなった。ポーラスで高圧縮性の物質の場合に起こりやすい現象と考えられることから、先ずはそのような物質の基本的な衝撃特性を押さえておく必要があると考え、種々の低密度粉末試料や典型的なポーラス物質である木材の衝撃特性測定を行った。その結果、通常の非ポーラス物質(固体)とは大きく異なる衝撃波伝搬挙動を示すことがわかった。固体物質の衝撃波反射挙動は出発物質の衝撃圧縮特性(衝撃圧-粒子速度ユゴニオ)で近似されることが実験的に示されているが、高圧縮性のポーラス物質の場合には出発物質の衝撃圧縮特性では近似できないことが示されたことから、従来の考え方が当てはまらないことがわかった。これは高圧縮性のポーラス物質の場合に、第一ショック状態の密度が極端に増加することが主に効いている考えられる。このことは衝撃圧縮時の瞬間の粒子間相互作用の大きさに直接影響を与えると考えられ、衝撃波誘起ルミネッセンスの発現機構にも密接に関連していると思われる。更に、ポーラスでない物質の場合でも十分に圧縮率が高い物質であれば従来の衝撃波反射挙動とは異なる挙動を示すはずであると考え、プラスティックの中でも特に圧縮率が高いテフロンの衝撃反射挙動を速度干渉計(VISAR)を用いて調べた。その結果、わずかながら従来の考え方から予測される挙動とは異なることが示された。このことから従来の反射衝撃波の伝搬挙動の考え方は、ポーラスであるかないかに拘わらず圧縮率の非常に高い物質の場合には当てはまらない可能性があることがわかった。この性質が未知の発光現象(衝撃波誘起ルミネッセンス)の発現機構にどのような役割を果たしているかを明らかにすることにより衝撃波誘起ルミネッセンスの現象解明を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特殊な発光現象「衝撃波誘起ルミネッセンス」を示す物質の衝撃特性が通常の固体物質の場合に知られている挙動とは大きく異なることを明らかにした。このことが衝撃波誘起ルミネッセンスの発現機構に関与していると考えられる。更に、この特殊な発光現象が観測されるための条件を詳細に特定することにより発光のメカニズムを解明する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに粉末試料の密度を上げると衝撃波誘起発光は弱くなることがわかっている。初期密度が高いほど衝撃圧縮による密度上昇率はさがる。密度が多きく変化する(密度上昇率が大きい)ということは粒子間の相互作用がより強いことを意味するから、相互作用が強いほど衝撃波誘起発光も強いという合理的な因果関係を示しているといえる。つまり、粒子間相互作用(摩擦など)が強いほど衝撃波誘起発光の発現効率が高いことを示していると考えられる。このようにこの発光現象をより強く(あるいは弱く)発生させる条件を詳細に知ることにより発光および励起のメカニズムを推測することが可能になる。衝撃圧縮下の試料の温度・圧力のみならず、発生するホットスポット、ジェッティング、欠陥の強度や密度を大幅に変えて詳細な発光強度の測定を行う。また、試料のドーパント(Ce3+)を変えたり、ドーパントを含まない母材だけの試料を使うなど、様々な条件での発光特性を調べることにより、発光源がドーパントの希土類イオンなのか、欠陥なのかを特定することが可能となる。これらの詳細な測定により衝撃波誘起ルミネッセンスの現象解明を試みる。
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Causes of Carryover |
当該年度は衝撃特性測定に重点を置き、その解析にも多くの時間を費やした。その結果、従来の考え方では説明できない「異常」な衝撃波伝搬挙動が観測され、それが本研究の衝撃波誘起発光現象の出現機構に重要な役割を果たしていることがわっかた。一方、発光特性測定は本研究の中心となる実験であるが予定よりも少ない実施回数にとどまった。発光特性のその場観察実験に必要な消耗品等の購入が予定より少なかったことが主な理由である。次年度は発光特性測定を重点的に実施する必要があるので、そのための消耗品等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)