2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the origin of highly anomalous valence change in Yb compounds
Project/Area Number |
18K18743
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
辻井 直人 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (90354365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 人志 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 特別嘱託研究員 (30239850)
櫻井 裕也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, グループリーダー (60421400)
大村 彩子 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60425569)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | Yb化合物 / 重い電子系 / 価数揺動 / 圧力 |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類イオンは通常、化合物中では3価の電子配置をとり、4f電子は局在磁気モーメントを担うことが知られている。しかしCe、Pr、Sm、Eu、Ybなどの希土類元素では、3価と4価もしくは2価と3価の異なる価数をとることがあり、さらにはこれらの中間価数状態をとるものもある。このような現象は混合原子価または価数揺動と呼ばれ、固体物理の重要な研究テーマとなっている。Ybを含む金属間化合物では2価と3価の価数揺動がしばしば観測される。この起源は伝導電子とf電子のc-f混成である。このとき、圧力を印加すると、格子体積が収縮するためにイオン半径の小さな3価状態のエネルギーが下がり、2価は不安定となるため、イオンの電子状態は3価に近づくのが普通である。 しかし我々はこれまでYbCu5やYbCu4.5などで、圧力において価数が逆に2価にシフトするという極めて異常な現象を発見してきた。この現象は通常のc-f混成の理解を超えたものである。そこでこの異常な価数変化の起源に迫ることで、全く新しい固体物理の概念に到達できる可能性がある。 今年度はYbCu5系の類似化合物YbCu4X (X=Ag, In等)においても圧力下測定を行い、いくつかの化合物において、YbCu5と同様もしくはより複雑な圧力依存性をもった異常な価数変化を観測した。さらに圧力下X線回折による構造解析により、格子定数の圧力依存性が価数異常と連動して異常を示すこと、また、原子パラメーターが価数変化と強い相関があることを見出した。また、Yb-Cu化合物において圧力誘起の一次価数転移も新たに見出し、多岐にわたる価数異常が現れることを明らかにした。これらの結果は現在、論文投稿の準備中である。また、Ybの価数揺動によるゼーベック係数の増大を期待してYbをドープしたクラスレート化合物を作成し、熱電特性を評価した結果について、論文で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度より、世界的なパンデミックの影響が避けられず、大部分の研究活動に制約を受けた。そのなかでも、注意深く実験を進めることにより、価数の異常を示すYb化合物を新たに複数見出している。さらに放射光X線による高分解能吸収分光により、価数の圧力依存性を30GPa付近まで直接観測した。同時に、放射光X線による圧力下X線回折測定を行い、圧力中における結晶構造パラメーターの精密化を進めた。これにより、価数の異常な増加と結晶構造パラメーターの相関を見出すことに成功した。現在、論文投稿の準備を進めている。また、Ybをドープしたクラスレート系試料に関する結果が論文で出版された。このように本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
圧力下のYb価数変化を放射光X線分光により直接測定することに加えて、Cuなど他の原子サイトにおける圧力下吸収測定を同時に進めることで、Yb価数の変化の起源についてミクロな視点から研究を続ける。さらに圧力下放射光X線回折を引き続き行い、構造パラメーターの精密化によって、Yb価数と構造パラメーターの相関を明らかにする。
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Causes of Carryover |
世界的なパンデミックにより様々な研究活動が制約を受け、物品購入の遅れや出張のキャンセルなどが生じた。このため予算未使用額が生じた。次年度使用額として、研究を推進させるために、物品購入費や実験旅費等として計画的に使用したい。
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