2018 Fiscal Year Research-status Report
量子化条件で規定される新規な絶縁体状態の理論的研究
Project/Area Number |
18K18744
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山瀬 博之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (10342867)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 物性理論 / 金属絶縁体転移 / 量子化条件 / 擬一次元物質 / プラトー |
Outline of Annual Research Achievements |
擬一次元物質を特徴付けるラダー模型の鎖の数をNxとした時、Nx=2,3,4の場合に対して、電子異方性プラトーが生じるパラメタ領域を、化学ポテンシャル(またはサイトあたりの電子数)と外的な異方性の大きさの平面で明らかにした。温度は絶対零度である。電子間相互作用がない極限でもプラトーが生じることを相図上で確かめると共に、相互作用が存在すると電子異方性プラトー状態には不連続的に入り込むことが分かった。この不連続性は、プラトー状態に入る相境界で電子ネマチック転移が生じることによる。プラトー状態へ不連続的に入り込む例は、類似現象である磁化プラトーやホール伝導度プラトーでは知られていないことから、電子異方性プラトーの特異な性質であることが分かった。ただし、常に不連続的になる訳ではなく、連続的にプラトー状態に入るパラメタ領域も存在することを明らかにした。プラトー状態は、サイトあたりの電子数とNxのみで記述される量子化条件で決定される絶縁体状態であるが、それ以外にも、ある「マジック」化学ポテンシャルに対して、量子化条件で規定されないプラトー状態も現れることが分かった。このプラトー状態は金属状態である。これらの相図の理解を式の上ですべて確認すると共に、プラトー現象の背後にある物理的な概念を掴むことにも成功した。以上の成果は、本研究課題の一年目の研究計画に則ったものであり、ほぼ順調に研究を実施できたと言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究計画そのものを終えることが出来たが、その結果を論文としてまとめることが2年目にずれ込んでしまった。この意味で、おおむね順調に進展している現状である。2年目に論文執筆がずれ込んだ原因は、関連する研究の原著論文を2019年1月に2報出版し、そのために多くの時間がかかり、相対的に本研究課題への時間配分が少なくなったことにある。
|
Strategy for Future Research Activity |
1年目の成果を論文としてまとめることが最優先課題であり、現在進行中である。その中で、類似模型に対するくりこみ群による研究結果があることに気づいた。その結果を本研究課題に適応すると、擬一次元物質特有の強い揺らぎがあっても、期待されるプラトー状態は、安定的に存在できることが示唆される。つまり、量子化条件で規定された電子異方性プラトーの絶縁体状態は、サイトあたりの電子数と鎖の数Nxのみで決まっている、という可能性が強く示唆され、相互作用の強さに依存しない全く新しい絶縁体状態と言える、という結論が見え隠れしている。この結論を確かめるべく、過去のくりこみ群の結果を再考すると共に、必要であれば、より現代的な理論手法である汎関数のくりこみ群を用いて電子相関効果を吟味する。ただし、1年目に発見した「マジック」化学ポテンシャルにおけるプラトー状態は金属状態であり、これが電子相関効果によってどうなるかは全く不明である。この点に関しては、汎関数くりこみ群による計算を行う。以上の研究を通して、電子異方性プラトーの絶縁体状態の学術的位置付けを明確にする。
|
Causes of Carryover |
数値的物質解析装置の増強において、入札価格が見通し通りピッタリでなかったために繰り越しを行なった。その繰り越し金は、次年度の旅費として主に使用する予定である。
|