2019 Fiscal Year Research-status Report
ベクトルトモグラフィを応用したプラズマ流ベクトル場イメージング計測の開発
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18K18747
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田辺 博士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (30726013)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / プラズマ診断 / 磁気リコネクション / コンピュータトモグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の分光測定系の整備に引き続き、2019年度はベクトルトモグラフィを用いた流速ベクトル場測定の準備(理論検討・シミュレーション・光学/機械設計)および、プローブを用いたreferenceベクトル場空間分布測定を実施した(並行して予定していた英国共同研究については分光測定系整備まで完了)。研究初年度は、イオン温度測定系で得られたイオン温度(スカラー場)の空間分布とその勾配から、熱流束ベクトル場の測定を行ったが、本年度から着手する流速ベクトル場を対象としたトモグラフィでは、視線積分の系が通常のスカラー場のラドン変換と異なりベクトルラドン変換となるため、ベクトル場に対応可能なベクトルトモグラフィの開発に取り組んだ。 同問題解法として、A.L.Balandinらが提案する、ベクトル場をヘルムホルツ分解してスカラーポテンシャルΦの勾配とベクトルポテンシャルΨの回転に分解し、V=∇Φ+∇×Ψとし、ポテンシャルの空間分布を得ることにより流速ベクトル場を得る方法のドップラー計測への組み込みを行った。非圧縮性(∇・V=0)が仮定できる条件では∇・V=∇・∇Φ+∇・∇×Ψで第2項が0となるため、∇^2Φ=0となることを利用してラプラス方程式の数値解法でΦを求め、Ψは流れ関数と渦度の関係を利用して(ヘルムホルツ分解の式で回転(∇×)をとることで得られる)、渦度ω=∇×V=-∇^2Ψとすることで解く解法を利用した。ドップラー計測では測定信号はドップラーシフトを受けた線スペクトルとして得られるため、同波長分布の1次モーメント(発光量の重みがついたドップラーシフトεV)にベクトルトモグラフィを適用してεVの空間分布を求め、波長分布の0次モーメント(発光量εに相当)には別途スカラートモグラフィを施してεの空間分布を求め、発光量の重みづけを除去する方法により流速ベクトル場の空間分布測定を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、年度末にコロナウイルス流行の問題があり若干の影響は見られたが、影響は2-3月のみで許容範囲の遅延のため(2)と評価する。予定していたベクトルトモグラフィの理論検討・シミュレーション・光学/機械設計検討および国際展開について、トロイダル流速ベクトル場測定については実装が完了し、英国トカマクエナジーST40実験への国際展開も一部開始したところである。圧縮性フロー存在化の場合の理論検討を慎重に行ったため、ポロイダル流速測定系への応用は一部遅れがみられるが計画全体としては許容範囲であり順調に進展している。 トロイダル測定系への応用については、初年度に構築した分光測定系が集光系を含めてそのまま応用できたため、理論検討・シミュレーション・実験導入を予定通り完了した。プラズマの非圧縮性の仮定が成り立たない場合が懸案ではあったが、r-θ-z円筒座標系のトロイダルフローVθ成分の測定の場合、∇Φ=[∂Φ/∂r, 1/r * ∂Φ/∂θ, ∂Φ/∂z]のうち、第3項はトロイダル接線視野の測定系では測定視野に垂直方向のためドップラーシフトには検出されず、第2項はプラズマのトロイダル対称が成り立つ場合∂/∂θの微分項は0である。第1項は視線積分経路ベクトルと内積を取って積分されるベクトルラドン変換の過程において、R方向成分の流速と経路ベクトルの第1象限上の内積と、第2象限上の内積で符号が逆転するため相殺し、∂Φ/∂rの貢献はスペクトルの1次モーメント測定で得られるシフトに検出されないことから、トロイダル成分Vθについては圧縮・非圧縮の仮定によらずトロイダル接線視野の測定で独立して計測できることを理論・シミュレーション・実験で確認した。ポロイダル流速測定についてはプローブによる参照ベクトル場測定が完了したところであり、同様にして理論・シミュレーション・実験の連携により研究を推進する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2020年度は、ベクトルトモグラフィを用いた測定系の完成および、プラズマ実験装置TS-6(TS-3U)の物理解明実験(磁気リコネクションによる加速/加熱・高ベータ球状トカマク合体生成実験)への応用、英国トカマクエナジーST40実験への国際展開、研究成果とりまとめを実施する。 トロイダル測定系は完成のため、主としてポロイダル測定系の最適化に重点を移し、研究を推進する。2019年度にプローブ測定で取得した参照ベクトル場データをもとに(静電ポテンシャルおよび磁場測定によるE×Bドリフト測定およびドップラープローブ測定)、磁気リコネクション・プラズマ合体で得られる流速パターンは四重極ベクトルポテンシャルでも記述できるベクトルポテンシャル再構成型のトモグラフィ応用に有利な空間分布であることが分かったため、これをもとにした数値ファントムによる計算機実験を並行し、測定視野の配置を最適化したポロイダル流速ベクトル場測定を実施する。※英国トカマクエナジーST40実験への国際展開については、実験装置のポートの制約によりトロイダル測定系のみの応用にとどめる。 本計測系により得られる流速測定結果について、磁気リコネクションの加速・加熱、高ベータ球状トカマク生成実験への還元を開始する。流速ベクトル場のシアーの測定が可能となることにより、流速の散逸過程における粘性加熱パワーや、輸送方程式の対流項その他を定量的に実施することが可能となるため、東京大学TS-6(TS-3U)におけるプラズマ合体で生成されるリコネクションアウトフローの熱化を通じた高ベータ球状トカマクの生成過程について、熱輸送に加えて運動量輸送過程の可視化を実現し、より詳細な理解に貢献する。本研究で2020年度は最終年度に相当するため、開発内容および実験応用結果を元に、研究成果のとりまとめとして論文出版および成果発表を推進する。
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Causes of Carryover |
2019年度は当初ポロイダル集光系完成までを予定していたが、2-3月のコロナウイルス問題発生に伴い海外工場生産物品の調達に影響が出たため、年度をまたぐリスクのある備品調達は控えるとともに、3Dプリンタの導入で試作品製作コストを大幅に抑えることが可能となったことから、次年度繰越への基金予算の柔軟性を活かし、残額は使い切らずに残す形とした。ポロイダル集光系用のレンズについては年度内に調達ができたため、2020年度は以下の用途を計画している:①ポロイダル集光系用の集光用光ファイバーバンドルとコリメーションレンズ接続治具、②研究成果とりまとめ・国際展開(トカマクエナジー国際共同研究)。 ①については現在東京大学TS-6装置において、準ポロイダル平面を切断可能な真空窓が6面利用可能なため(装置中心から80mmシフトした位置を切断)、同窓を利用して集光系を構築する。f=30mmの非球面レンズのバックフォーカス値を利用してコリメーションレンズとファイバー端面間の距離を固定することで、自動アライメント型で光学系固定治具を製作し、多チャンネル測定の較正・実験が円滑に遂行できるようにする。 ②については、2020年度は最終年度に想定するため、研究成果のとりまとめおよび成果公表として論文出版(オープンアクセス)を開始するとともに、同イメージング計測技術を積極的に売り込み、実務を交えて成果公表を推進する。
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[Presentation] Micro/macro-scale ion heating and transport process of magnetic reconnection during merging plasma startup of TS-6 spherical tokamak2019
Author(s)
H. Tanabe, Q. Cao, H. Tanaka, T. Ahmadi, M. Akimitsu, M. Gryaznevich,T. O'Gorman, J. Wood, R. Scannell, K. G. McClements, M. Inomoto and Y. Ono
Organizer
61th Annual Meeting of the APS Division of Plasma Physics
Int'l Joint Research
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