2020 Fiscal Year Research-status Report
ベクトルトモグラフィを応用したプラズマ流ベクトル場イメージング計測の開発
Project/Area Number |
18K18747
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田辺 博士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (30726013)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / プラズマ診断 / 磁気リコネクション / コンピュータトモグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年度目となる2020年度は、TS-6装置を用いた実験データ取得および、限定的ながら研究成果の公表、ドップラートモグラフィ計測に関連した共同研究推進の形で研究を遂行した。2020年度はコロナ禍の影響が深刻な東京地区の制限も影響し、学内入構規制・出張制限等の制約が加わったため、当初は2020年度を最終年度として計画していたが、研究計画を1年延長し、2021年度までの4年計画に修正する形で研究を推進した。 東京大学TS-6装置を用いたトーラスプラズマ合体実験において、ガイド磁場の影響下の磁気リコネクションを介したプラズマ加速・加熱実験を通じて、 ①X点に対して径方向内側に偏りを持つ加熱効果 ②ポロイダル方向に大域的に回転する極性効果 の二つの特徴的な構造形成現象が確認された。従来ガイド磁場リコネクションでは、二流体・運動論効果による四重極ポテンシャル構造の形成と対応して、正のポテンシャル領域から負のポテンシャル領域に向かう静電場による加速されるとする説が理論・シミュレーション研究では予測されていたが、実験では同極性と反対方向に高温領域が発現する現象が確認された。同四重極電位構造はExBドリフトにも影響を及ぼし①の極性とは限定的ながら対応するが②の極性を説明づけるほどの効果ではなかった。2020年にリモート開催された米国物理学会では、同現象がトロイダル・ポロイダル温度異方性の効果とする説も含めたアイデアが展開され、本研究成果を物理解明実験としても完結させるため、当初計画から1年継続して引き続き同現象の詳細解明実験の継続が必要となった。現在、同現象についてはプリンストンプラズマ物理研究所C.Z.Cheng博士との連携により、磁力線方向成分のパラレル電場による加速で説明づけられる可能性を議論しているところであり、1年計画を延長した2021年度に研究成果のとりまとめを実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は当初2020年度を最終年度と予定していたが、コロナ禍の影響により実験計画の遅延および、研究成果公表の場であるICPP2020招待講演やIAEA核融合エネルギー国際会議(FEC2020)の延長により、研究計画を1年延長して4年計画に修正し、2021年度に研究成果とりまとめの形に変更を行ったため、「やや遅れている」と評価する。 予算執行計画については遅延が見られる一方、実験成果としてはガイド磁場リコネクションを介した球状トカマク生成/加熱実験において、トロイダル磁場極性と対応してポロイダル方向に非対称に大域的に回転する非常に興味深い構造形成現象が発見され、さらに同極性はガイド磁場リコネクションの理論・シミュレーション予測と逆極性の回転のため論文成果公開前ながら現在同研究業界において注目を集めており、1年延長の形で計画を遅延させても、2021年度まで本研究を継続することが重要と判断した。同現象解明のためには、温度・流速・密度・磁場・電流・電場等、多角的な視点からの統合解析が必要であり、それを可能とする計測系の拡充を現在他の研究(19H01866・20H00136)と連携して進めているところである。2020年度評価としては「やや遅れている」となるが、最終年度の2021年度段階の最終段階の成果としては「当初の計画以上に進展している」ところまで到達することを目標に、積極的な研究計画の延長を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に引き続き磁気リコネクションの加速現象の結果として現れるプラズマ加熱の構造形成現象の解明を視野に入れ、本研究で開発を進めている流速ベクトル場測定と平行して、同イメージング計測で得られた成果を現象解明に還元、概要等で記述した加熱現象の総合的な理解を目的に研究を推進する。研究成果公開については、2021年度も引き続きコロナ禍の影響の中の年度となるため、海外出張形式ではなくリモート学会発表を想定し、研究成果公開費用は主として論文成果に投入する。 具体的な実験計画としては、19H01866で進める電子温度・密度測定系の開発及び、20H00136による磁場・電流・電場測定および実験装置TS-6本体のアップグレード状況とも連携しながら研究を推進する。流速のエネルギーが熱エネルギーに変換される過程の評価においては、温度・密度測定で得られる衝突時間の正確な見積もりに基づく粘性係数の評価が必須であり、これと流速シアの積による粘性加熱パワーの正確な診断と合わせるとともに、加速現象そのものの起源の解明として、磁気リコネクションを介したE・Viとしてのイオンのエネルギーゲイン測定を推進する。トロイダル測定視野とポロイダル測定視野で得られた流速の他に、イオン温度についてもトロイダル/ポロイダル温度の異方性評価も合わせて推進し、トロイダル磁場極性依存性を持つイオン温度の大域的構造について、分布関数を評価する測定視野においてどのような差異が現れるか、統合評価実験を実施する。研究成果はNuclear Fusion誌等をはじめとした国際誌に投稿し、オープンアクセス形式をとることにより広く研究成果の公開を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍の影響により、研究成果公開として予定していたICPP2020国際会議招待講演やIAEA核融合エネルギー国際会議(IAEA FEC2020)の延期により、海外出張経費として計上していた研究成果効果用の経費を年度内で消化する必要がなくなった一方、実験を通じて新しく発見された構造形成現象の解明のため、継続した実験費用計上が必要となったため、2020年度内執行にこだわる形での本予算「使い切り」は控え、計画を1年延長して2021年度も本研究を継続する。 2021年度は引き続きコロナ禍の影響が予測され、研究成果公開として海外出張を再開できない可能性が残るため、残額予算は主としてプラズマ流測定実験および論文出版の形での研究成果公開費用として執行する。TS-6実験そのものの運転・メンテナンス費用は20H00136等で十分に確保されるため、本予算は主として本研究種目の主計測系であるプラズマ流測定系の集光視野改良費用として投入する。論文成果については高インパクトファクター誌であるNuclear Fusion誌等を中心に投稿を行い、国際的に広く結果の周知を行うためオープンアクセス形式で出版、最終年度となる本研究のとりまとめを実施する。
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[Journal Article] Overview of Merging Spherical Tokamak Experiments and Simulations for Burning, High-Beta and/or Absolute Minimum-B Plasma Formation2021
Author(s)
Y. Ono, M. Inomoto, H. Tanabe, H. Yamaguchi, M. Akimitsu, M. Gryaznevich, S. McNamara, P. Buxton, J. Kompulla, J. Wood, V. Nemytov, K. McClements, C. Z. Cheng, S. Usami and R. Horiuchi
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Journal Title
28th IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2020)
Volume: IAC/P4-3
Pages: 1-8
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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