2019 Fiscal Year Research-status Report
ハフニウム超伝導体を用いた究極の感度を持つ超伝導検出器への挑戦
Project/Area Number |
18K18761
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
飯田 崇史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (40722905)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | 超伝導トンネル接合素子 / ハフニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はハフニウム超伝導体(Hf)を用いて世界最高感度の超伝導トンネル接合素子(STJ)を開発し、宇宙・素粒子物理実験における実用化の第一歩を踏み出すことである。STJは超伝導検出器の一種であり、信号電荷を一つ励起するのに必要なエネルギー(Δ)が半導体検出器と比べて3~5桁小さいため、信号が大きくなり高感度・高分解能な検出が可能となる。HfのΔは現状で世界最高感度であるAl超伝導体に比べても1/8と小さいため、原理的に8倍の高感度化が可能である。 本研究では、これまでに培ってきたHf-STJ作成プロセスの改良により、高性能のHf-STJを開発し、そのHf-STJの性能評価を行うことを目指している。2年目となる今年は、初年度に引き続き韓国・基礎科学研究院 Center for Underground Physics(IBS-CUP)と協力してHf-STJの性能評価を行った。IBS-CUP所有の断熱消磁冷凍機(ADR)を用いて、35mKの極低温環境で200μm角Hf-STJに55Fe線源からの5.9keVのX線を照射した。昨年度は測定の際にジョセフソン電流が問題となっていたが、本科研費で超伝導コイルを作成し、ADRに導入することでジョセフソン電流の抑制に成功した。その結果、エネルギー分解能=6.9%@5.9keVを達成した。Hf-STJに線源を照射しての性能評価は世界初である。この成果は、2019年7月にイタリアのミラノで開催された18th International Workshop on Low Temperature Detectors (LTD-18)という国際会議で報告された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最大の目的であるハフニウム超伝導体を用いた、超電導トンネル接合素子(Hf-STJ)の開発に一定の目途がついた。さらに作成したHf-STJを用いた性能評価、特に単一光子の検出に成功しており、本研究の重要な課題はおおむねクリアしたと言える。今後は実用化に向けたさらなる性能向上を目指していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究から、現在のHf-STJの性能を抑制している原因が、リーク電流にあることが分かった。リーク電流を削減する方法を模索していく必要があるが、まずはシンプルにHf-STJのサイズを変更して性能を調査する。すなわち、これまでの200μm角から10μm角にすることで、リーク電流の低減を図る。2020年中にIBS-CUPの冷凍機に10μm角のHf-STJを導入して、55FeのX線を照射してエネルギー分解能を測定する。また波形情報を基に、より高分解能を実現出来る解析手法を検討する。
|
Causes of Carryover |
本研究において、ハフニウム超伝導体を用いた世界で初めての超電導トンネル接合素子(Hf-STJ)の開発に取り組んでいる。今年度は200μm角のHf-STJを韓国のIBSで性能評価実験を行い、線源を照射することでエネルギー分解能を得ることに成功した。しかし同時に、リーク電流が原因でエネルギー分解能等の性能が制限されていることが明らかになってきた。次年度は実用化に向けてより高感度を実現するために、リーク電流の少ないことが期待される10μm角の小型のHf-STJを用いて韓国で性能評価実験を行う計画に変更した。そのために補助事業期間延長の申請を行い、許可された。
|