2020 Fiscal Year Research-status Report
diverse galaxies from early formed supermassive black holes
Project/Area Number |
18K18765
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
森川 雅博 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (90192781)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 超巨大ブラックホール / ボーズ凝縮 / 赤外揺らぎ / ユニゾン(音楽) / UBR(音楽) / 惑星形成 / 乱流ゆらぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年は研究計画第1段階を中心に超巨大ブラックホール(SMBH)が形成される条件を検討し,特にボーズ凝縮(BEC)した暗黒エネルギー(DE)又は暗黒物質(DM)の崩壊過程を考えた.この問題の基礎方程式を考えるときに本質的になる量子凝縮の生成という基本問題に進んだのだった. ◆ それを基に,より現実的な問題は,BECの揺らぎがどう表れるかである.特にBECの揺らぎは,初期宇宙のインフレーションが作る揺らぎと共通し,赤外領域(低周波領域 IR)にスケール不変な特異性を持つ普遍的なものである.初めから量子論を正面から考えていたが行き詰まり,もっと広くこのIRで特異な揺らぎを特徴づけようとした. ◆ まずスケール不変性から乱流との関連性を見た.乱流を系統的に見直したところ,銀河・星・惑星などあらゆるスケールで宇宙構造のスケーリング秩序を作ることを見出した.特に,惑星との関連が意外だったのでこれを突き詰めてみた.その結果は地球惑星学会で発表した. ◆ 更に進めていくと,意外にも,音楽と関係が深いことがわかった.特にオーケストラの持つユニゾンがその系統的な唸りによって,普遍的にIRで大きな揺らぎを導くことを見出した.そのパワースペクトルは-1に近いが,よく知られている1/f揺らぎとは起源が違うものである.高調波を重ね音色を作った場合,ビブラートの効果,メロディーの連続と音の重なり,楽器の共鳴など一般化を進め,どのような場合でもスペクトル指数-1の冪になっていくことを見出し,論文にまとめた.この中で,このIRでの特異性をUBRと呼んで,音の3要素(高さ,強さ,音色)に続く第4の音の特徴付けとして議論を展開した.この論文の後半で,量子論の場合を再考し,そこにおいても,SMBHを作る議論で当初期待していた通り,同様にスペクトル指数-1の冪が出現することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた研究計画「原初超巨大ブラックホール(SMBH)を作る,そしてそれが作る多様な銀河たち」のうちの第1段階で,様々な問題が見出され,なかなか先に進めないでいた.ただし,それらの問題はどれも基本的で普遍的な問題であり,解決されれば今後多方面に有用だろう.したがって,多少遠回りではあるけど,原理的な問題をまずある程度解決しようとした.その問題は以下のようなものである: ◆ 量子論から古典論への移行過程.量子論基礎の話題であるが,BECとその基礎方程式を理解していくうえで重要である. ◆ BECの揺らぎの記述.量子系で古典自由度が出現するとき,普遍的に揺らぎが付随する.この揺らぎがSMBHの質量関数も決める可能性があり,追究した.なお,BECは,初期宇宙でのインフレーションの力学にも本質的である可能性があり,重要. ◆ 角運動量問題.BECがSMBHを作るのに,まず大きな角運動量が障害となる.不思議なことに,バリオンからSMBHをつくシナリオにおいては,過去に角運動量があまり考察されていない.しかし,角運動量が主にSMBH形成を阻害する.BECの主体がアクシオンであると考えると,それは非常に弱い引力を持つ.この引力が角運動量に打ち勝ちSMBHができる条件を探っていった. ◆ 乱流.角運動量の問題と関連して,乱流が構造形成を阻害したり促進したりする.BECの記述するDMでも,星間ガス構造を担う水素ヘリウムガスでも,惑星形成を促すダストでも,乱流が系統的に構造を支配している.特に,ダストにおいて,どのように惑星形成が進行するのかを,乱流が支配的になる原始惑星系円盤の内縁に着目して,新しいモデルを作っていった.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた,原初超巨大ブラックホールが作る多様な銀河たちを,第2段階の「多様な銀河」を作り検証するところまでを進める.特に,遅れていたワークステーションが納入され,大きな計算を自由にできるようになったので,この延長された研究期間1年で,当初の予定を完成させる.同時に,前年までにせっかく踏み込んで解明されつつある原理的な問題に関しても,計算機を駆使して進めたい.具体的な方針は以下のとおりである: ◆ 多様な銀河形成を考える:特に最近活発になってきている初期宇宙観測の成果を取り入れる.宇宙最遠方に見出された整った渦巻銀河やどんどん高赤方偏移に見出されるSMBHや銀河団と,SMBHが主に周りの銀河を作っていったというシナリオの整合性を中心に検証も含めて議論したい.◆ BECの原理:宇宙を加速させるのは,DEだけでなく,初期宇宙のインフレーション時期のインフラトンも同様である.それも含めてBECのシナリオの原理を確立したい.◆ 揺らぎの原理:BECの原理の項で,量子系から古典系への遷移において,零点振動に究極の起源を置く(古典的な)揺らぎが必然的に出現する機構をさらに追究したい.この一つの応用として,電子デバイスで普遍的に出現する1/f揺らぎの統一理論の可能性を探る.特に,30年以上前にHandelによって提案され,物性物理のほとんどの研究者が否定した,量子的な唸りによる揺らぎの出現の可能性を追究する.その指針は,Nieuwenhuizen, van Kampen. や Kiss らによって明示された,10ほどの問題リストに順次反論していくという形で着実に進めたい.◆ 音楽の分野における,音の第4要素に関しても,客観的な特徴付けをもっと定量化することによって強化し,同時に,(感覚器官としての耳や脳)に関する主観的な定量化も含める.
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Causes of Carryover |
2つの理由があります.まず,ワークステーションの選定及び購入が遅れたので,それに搭載するGPUを決定できなかった.さらに,covid19関連で国際会議に出席できなかったので,そのための旅費が消費できなかった. 当該科研費での研究期間をせっかく1年延長していただいたので,次のように有効に使いたいと思います.◆ まず,当初予定のGPUを購入するか,あるいはCPU/主メモリーをアップグレードするか,どちらかを選択します.いずれも,多次元パラメター空間での効率的な計算が可能になります.銀河形成モデル,惑星形成モデル,そして揺らぎ形成モデルのいずれでも有用な研究資源となります.◆ また,covid19が継続している状況なので2021年度も海外の国際会議へ行けそうにありません.その予算を,論文掲載費に回したいと思います.特に,惑星や音楽の分野では論文掲載費用がかさむので,この予算を最大限利用したいと思います.
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Research Products
(5 results)