2019 Fiscal Year Research-status Report
U-Pb年代測定用の標準試料を自由自在に合成する:地球年代学の飛躍的発展への寄与
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18K18780
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鍵 裕之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70233666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 岳史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10251612)
折橋 裕二 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70313046)
宮嶋 佑典 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員 (60826056)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | アモルファス炭酸カルシウム / U-Pb年代測定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
U-Pb年代測定法は地球誕生初期から使用できる適用範囲がきわめて広い年代測定法である。特にレーザーアブレーションICP-MSの普及と技術的発展により、局所領域でのU濃度、Pb濃度、Pb同位体の高精度測定が可能となってきた。また、長い地球の歴史を通して、地球上のいたるところに普遍的に存在してきた炭酸塩に対してU-Pb年代法が適用できれば、地球年代学の研究が飛躍的に進展する可能性がある。幅広い炭酸塩試料を対象としたU-Pb年代測定を実現するためには、UとPbを実試料に近い濃度で均質にドープしたカルサイト(炭酸カルシウム)の標準試料を用意する必要がある。しかし、U, Pbはカルサイトに対しては不適合な(インコンパチブルな)元素のため、これまで思い通りの濃度でかつ均一な濃度のUとPbを取り込んだカルサイトの標準試料を準備することは実質的に不可能であった。 本研究では任意のUとPbを取り込んだアモルファス炭酸カルシウムを合成し、これを高温下で短時間のうちに結晶化させることで、UとPbを結晶構造中に取り込んだカルサイトを合成できることが明らかとなった。本研究により、U, Pbだけでなく、希土類元素などの微量元素も含めてカルサイトにドープする実験技術を開発することができた。 得られた試料については既にレーザーアブレーションICP-MSによる局所分析を行っている。本研究で得られた粉末試料にはU, Pbなどの微量元素が、想定された濃度で、かつ均一に取り込まれていることを確認した。さらにXAFS分光測定を行い、カルサイト中に取り込まれたUとPbの局所構造を明らかにした。これらの研究結果は原著論文として投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、UとPbを均質にカルサイト中にドープすることに成功し、U-Pb年代測定法の標準試料として使用可能であることを確認した。さらに研究の過程で、カルサイトに不適合な大きな陽イオンをドープすることで、炭酸イオンのdisorderが室温条件で起こることも新たに見いだした。この結果は当初予期していなかった成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
UとPbがカルサイト構造中に安定に取り込まれることは明らかになった。実際の標準試料として利用するためには、今後は複数の独立した研究者間で分析データを共有し、標準試料としての品質を評価して実用段階までもっていくことが望まれる。また、Pb同位体組成の絶対値を決定する測定も今後行う必要があるだろう。
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Causes of Carryover |
今後、得られた試料を複数の研究機関に所属する研究者とともに分析する計画があるため、分析用の高純度試薬を購入する予定である。また、鉛同位体の絶対値の測定のため、イギリスへの出張も可能であれば実現したい。
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Research Products
(6 results)