2018 Fiscal Year Research-status Report
冥王代熱水系における二酸化炭素流体を用いた生体高分子合成実験
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18K18783
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤島 皓介 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (00776411)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | CO2流体 / 深海 / 界面化学 / 分子進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球生命の起源と進化の問題を考える上で、過去の初期地球を想定し、どのような環境において特定の有機分子が濃縮や化学進化を経て現在の生命の基礎に繋がっていったかを考えることは非常に重要である。生命システムの中心にはDNA/RNA、タンパク質といった高分子(ポリマー)が遺伝情報の伝達と触媒反応に関わっているが、これらの生体関連ポリマーは水中において熱力学的に合成が困難であることから、今回我々は単分子濃縮とポリマー重合が起きうる新しい反応場として深海熱水系近傍に溜まるCO2流体(液体/超臨界)の疎水的環境に着目した。 地球化学モデリングにより酸性の冥王代海洋に溶けこんだCO2をソースとした多量の流体(液体あるいは超臨界状態)の存在が示唆されたことから、学生RAを中心に実験室内で専用耐圧容器を作成改良し、途中リーク等の問題はあったが液体CO2と海水相の2層構造を再現することに成功した。そこで最初の環境模擬実験として、海水中の5種類のイオン(Cl-, Na+, Mg2+, K+, Ca2+)の液体CO2への分配率を測定する系を立ち上げた。今後は研究実施計画に基づき、アミノ酸等の有機物の分布の測定に移行する予定である。また同時に初期地球のCO2流体のアナログとして沖縄沖海底より天然のCO2流体サンプリングし、溶存している有機分子の種類と分布をマトリックス支援レーザー脱離イオン化分析装置(MALDI-MS)で測定した結果、中性脂質と思われる分子群を検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の開始当初、液体CO2環境を再現するための専用耐圧容器からのリークが幾度も見つかり、容器の調整に時間が割かれ、研究の進捗がスローダウンしてしまった。したがって当初予定していたアミノ酸や核酸を用いた実験は次年度に持ち越し、まずは液体CO2相と海水相の2層構造を実験室内で再現し、海水からの各種イオンの液体CO2相への移動を確認するに留まった。一方で実際の地球環境に存在する天然の液体CO2サンプルを分析する機会を得たことは重要で、当初の研究課題には含めていなかったものの、実験室内での再現実験との比較解析を行うことができるという意味で両方の分析を同時進行で進めて行くことに意味があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当初予定していた超臨界流体抽出(SFE)及び超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を用いて原始地球海洋に溶存していた可能性のある生命関連分子のアミノ酸、ペプチド、核酸前駆体の液体CO2相への溶存度を確認する作業を行う。溶解度に差が生じた場合、同環境が分子の物理化学的特性に依存して選択的に分子濃縮を行うことが示唆される。また天然の液体CO2サンプルに関しても、引き続きMALDI-MSやその他分析法を利用し溶存している有機化合物(生命関連分子含む)の同定を行うことで、模擬実験へのフィードバックを行う予定である。
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Causes of Carryover |
耐圧実験容器の不良により、当初の計画に遅れがでてしまった関係で試薬等の購入が次年度にずれ込んでしまったため。
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