2018 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of Quaternary crustal uplifting history of island arcs by inversion of river longitudinal profiles
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18K18786
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成瀬 元 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40362438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 昭人 京都大学, 理学研究科, 助教 (90324607)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 逆解析 / テクトニクス / 地形学 / 堆積学 / モーフォダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、河床縦断形の逆解析から島弧の隆起速度の時空変化を推定することを目的としている。これまでの熱年代学や段丘に基づく隆起速度復元手法は、局所的かつ特定の条件が整った場所しか隆起速度の復元ができなかった。これに対して、本手法は島弧全体を網羅する復元が可能である。また、タイムスケールに関しても、数十万から100万年程度の期間の隆起度速度変化を潜在的には復元可能であることが本研究の検討結果から明らかになりつつある。熱年代学の数百万年から数千万年スケール、段丘の数千年から10万年スケールの復元に対して、それらを補間するような隆起速度復元が本研究の手法は可能である。 今年度は手法の開発に務め、海水準変動を考慮したフォワードモデルの開発に成功した。このモデルは基盤岩の侵食を移流拡散方程式で表現するstream power modelを基本としている。モデルに空間的・時間的に離散化した任意の隆起速度履歴を与えると、山地の岩盤河川のプロファイルが計算される。この際に、隆起速度には第四紀で既存研究によって明らかになっている汎世界的海水準変動パターンを加える。これによって、第四紀の海水準変動がある中でも高解像度の隆起速度変化履歴を復元することが可能になる。さらに、逆解析を行うには、このフォワードモデルで計算された河床縦断形をDEMデータ(国土地理院10 mメッシュ)で計測されたデータと比較し、その差を最小化するように隆起速度履歴を修正するアルゴリズムが必要となる。今年度の検討では、いくつかの正則化項を加えればL-BFGS-B法で十分にこの最適化は可能であることがわかった。これらに加えて、今年度はフォワードモデルに基盤岩の強度の効果を取り入れるための検討を開始した。具体的には、西南日本の岩石採取を開始し、主として淡路島の和泉層群の砂岩をサンプリングを行い、試料の整形を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、今年度はフォワードモデルを使った逆解析法の実装を行った。結果として、海水準変動を組み入れ、潜在的には岩石強度も考慮することが可能なモデルの開発に成功を収めた。計算速度のチューニングはそれほど行っていないが、検討すべき事項として挙げていた最適化手法の選択を進めた結果、現状でも十分に西南日本の隆起速度復元が実施可能なプログラムができているものと判断している。これに加えて、まだ実際の岩石の強度測定は実施していないものの、そのために必要な岩石の採取は開始している。これらのことから、全体としては研究の状況は順調に進行していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、計画通りフォワードモデルの開発を進めるのと同時に、野外調査によって実際の岩石を採取して、その強度の測定を行うことを計画している。これに加えて、今年度は予察的な水槽実験も計画に加えたい。近年になって、本研究で用いているstream power modelは岩盤河川の侵食に関する素過程(運搬される礫によるabrasion過程)を十分に反映していないことが指摘されている。このことを考慮し、最も普及しているstream power modelとは別系統のモデルであるSklar and Dietrich (2006) のモデルをフォワードモデルとして用いる可能性を検討している。現状で両者のモデルにどの程度の違いがあるかを検討するため、プラスチック粒子を用いた簡単な水槽実験を実施したい。実験結果をモデル計算結果と比較することで、河川の下刻パターンの再現性を検討する。
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Research Products
(4 results)