2019 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of Quaternary crustal uplifting history of island arcs by inversion of river longitudinal profiles
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18K18786
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成瀬 元 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40362438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 昭人 京都大学, 理学研究科, 准教授 (90324607)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 逆解析 / テクトニクス / 地形学 / 堆積学 / モーフォダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,河川の侵食作用のモデルを用いて,河床縦断形から島弧の地殻隆起履歴を復元する手法の確立を目指している. 島弧における河床縦断形の逆解析を行うにあたって,最も大きな障害となるのは島弧地殻の基盤岩の強度が極めて多様であり,極端に強度が異なる岩石が隣接して露出していることである.そこで,今年度は,まずフィールドで採取した岩石強度の測定を行った.さまざまな検討の結果,岩石強度の代表値としてもっとも有効なのは引張強度(tensile strength)であることが明らかになった.そこで,共同研究者と共に阿武隈川に露出した花崗岩の引張強度を測定し,その結果を河床侵食作用のモデル計算に取り込むことを試みた. しかしながら,理論的検討を重ねたところ,従来の研究で用いられてきた単純なモデル(Stream power model)が,岩石強度を陽に取り込むことが困難なモデルであることが明らかになった.そこで,本研究では,より素過程に根差したSklar-Dietrich型モデルをフォワードモデルとして用いるよう方針の転換をはかることにした.Sklar-Dietrich型モデルは水流によって移動する礫の衝突が基盤岩を侵食すると考えるモデルであり,基盤岩の引張強度がモデルパラメーターの一つとなっているため,本研究の用途には適している. このモデルをフォワードモデルとして用いることの難点は,各地点での土砂流量および粒径がモデルパラメーターとして必要になる点である.これらの点については,(1)流域全体の削剥速度を土砂流量の推定に用いること,(2)実測値から得られる経験的関数を用いて粒径を推定すること,という二つの方針で解決する目途を立てている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度までの検討から,従来広く用いられてきたStream power model型のモデルでは,岩石強度を考慮することは困難であることが明らかになった.stream power modelは水流のエネルギー勾配がそのまま侵食速度と比例関係にあることを想定する単純なモデルであるが,近年の地形計測結果は,その仮定に疑問を投げかけるものが多い.最大の問題は,岩石の侵食速度を支配する経験的係数に様々な要素(岩石強度・流域ネットワークの複雑さ・降水量など)が含まれてしまっており,それらを分離して取り扱うことが困難な点にある.そこで,これまでとは異なるSklar-Dietrich型のモデルを本研究では採用するよう方針転換をすることになった.この結果,研究計画はやや遅れることになるが,しかし既存のモデルに疑問を投げかけたことは大きな成果ともいえるため,現在の状況が研究計画の大幅な遅延とまでは言えないと判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,すでに採取した各地域の岩石強度の測定を進め,日本各地の地質体を代表する堆積岩・火成岩の引張強度を測定する.また,フォワードモデルの実装を進める.新たに採用したフォワードモデルには,土砂流量と粒径の二つを各地点で設定しなくてはならないという弱点がある.前述のように,本研究ではこれらの難点をいくつかの仮定に基づいて解決する予定であが,それらの仮定が妥当なものであるかを判断するため,東北地方の阿武隈川および房総半島の河川を対象にして解析を行う予定である.これらの河川を選んだ理由は,各流域の隆起速度が他の手法で求められており,新たの手法の検証に適していると判断されるためである.手法の検証が行われ,モデルの仮定が妥当とする結果が得られれば,得られた手法を西南日本の各地の河川に応用する予定である.一方,モデルの仮定に疑義が見つかれば,フォワードモデルにさらなる改良を加え,島弧の隆起履歴を解析するのに適したモデルの開発に努める.
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Research Products
(4 results)